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【インタビュー「日本初の口臭外来を開設。全国から7000人以上が受診する口臭治療のパイオニア」第2回 ほんだ歯科・本田俊一院長】

自分の口臭が気になる「心理的口臭症」は治療することができる!

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実際に患者さんの口臭を判定する口臭の官能検査 ※試験者は患者ではなくモデル

「口臭は人間だけに起こります」――。

そのように話すのは「ほんだ歯科」の本田俊一院長だ。
 
 「日本口臭学会では、口臭を『本人あるいは第三者が不快と感じる呼気の総称である』と学術的に定義しています。つまり、会話の時に吐き出されてくる『吐く息=呼気』に悪臭があるということです。動物は会話をしません。会話をするのは人間だけですから、口臭は人間だけに起こるといえるのです」

 人間だけが呼吸をしながら声帯をふるわせて会話をする。従って、会話時は鼻呼吸ができず、口で呼吸をする。そのため、口や鼻の臭いを撒き散らしながら話すことになり、口臭がするのだ。

 「口の中には様々な菌が棲みついていますが、その中の嫌気性菌が、タンパク質やアミノ酸を分解しアミン、アンモニア、インドールなどの悪臭を発生させます。とはいえ、健康な歯や舌は臭いません。それでは何が臭うかといえば、唾液です」

たっぷりの唾液がサラサラと流れていれば口臭はしない

 正確に言えば、唾液が少なくなり、口の中を流れなくなると、臭いが強くなるという。

 「江戸の学者・貝原益軒は、心身の健康と長寿を保つ養生法を記した『養生訓』の中で、唾液は捨ててはいけないと説いています。しかし、寝起きだけはいいとも書いています。これは、どういうことかというと、サラサラの唾液が口の中を流れていれば、善玉菌を保護し、悪臭を発する悪玉菌を抑えることができるということです。口臭をふせぐためには、唾液がポイントになります」

 それでは、寝起きの唾液を捨ててもよいというのは、どういうことだろう?

 「睡眠中は唾液の分泌が少なくなり、また口腔内の乾燥も起こるため、菌が増殖を繰り返します。そのため、寝起き時は、1日の中で最も菌が増えている。つまり起床時には、誰でもひどい口臭があるのが当然なのです。そこで益軒は、起きてすぐに唾液を吐き捨て、うがい、歯磨きをすることがとても大切だと説いたのです」

食後はむしろ口の中の細菌数が減少する

 つまり、歯磨きは朝食後でなく、起きたらすぐにしたほうがいいのである。
「むしろ食事中には、唾液がたくさん分泌され、流れるため、食後には自然状態で最も唾液中の細菌数が減少します」

 このように、唾液が口臭を予防し、口腔の健康を保つのに重要な役割を果たしていることは、あまり知られていないだろう。
「みなさん、口の中では、歯が一番大事だ思っていますが、実は唾液。次が舌。そして歯は3番目です」

 舌は、唾液を流して、口中を清潔に保つ重要な役割をになっている。詳しくは、第3回「口臭はセルフコントロールできる」でお伝えする。

本田俊一(ほんだ・しゅんいち)

日本口臭学会常任理事・指導医、医療法人ほんだ歯科理事長・院長。1980年、山口大学農学部獣医学科卒業後、厚生省(現・厚生労働省)に入省、8年にわたり検疫業務に携わる。業務の傍ら大阪大学微生物病学研究所において腸管感染症の基礎研究も行なう。退官後、大阪大学歯学部に学士編入し、卒業後、歯科医院勤務を経て、95年、ほんだ歯科を開業。97年、医療法人ほんだ歯科を設立。歯科医師として臨床に携わることで口臭に悩む患者の多さを目の当たりにし、「口臭・口臭症」の研究に取り組む。2000年には口臭のデオドラント技術および口臭症治療に関するプロトコル「ほんだ式口臭治療」を確立。口臭に関する第一人者として知られる。

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