ペットが受ける副流煙の影響は、ヒトの数倍以上と考えられている。体のサイズが、成人とは決定的に違うため、ダメージの大きさは深刻だ。大型犬よりも、小型犬や猫、その他の小動物の方が悪影響は大きい。これは、人間の子どもにも、同じことがいえる。
理由は、まだある。副流煙に含まれる有害物質は重量があり、喫煙者から吐き出された後、地面に向かって集積していくことだ。つまりペット、とくに人間よりも明らかに地面に近い位置で呼吸をしている犬は、有害物質を吸い込む確率が高まるのだ。
臨床の獣医の多くは、普段から一般家庭のペットと接する中で、喫煙家庭のペットは、呼吸器系、循環器系、皮膚疾患、アレルギー体質などの症状の発生頻度が高いと感じている。また、副流煙にさらされる生活環境では、治療効果もかんばしくないことも実感している。
タバコそのものを口にする事故の怖さ
タバコの被害は、受動喫煙にとどまらない。タバコそのものをペットが口にする事故は、もっとも怖い。吸うよりも食べてしまった方が、ニコチンを直接摂取することになり、体に甚大な被害をもたらす。何でも口にしてしまう子犬や、好奇心旺盛なペットなど、タバコの誤飲事故は、枚挙にいとまが無い。
急性ニコチン中毒の主症状は、嘔吐、下痢、痙攣、流涎(よだれ)、呼吸困難、興奮などが挙げられる。摂取量や、対処次第では、死に至ることもある。処置が有効なのは、摂取後1〜2時間とされており、誤飲してしまったらすぐに動物病院へ駆け込むぐらいのスピード対応が求められる。
2020年に向けた喫煙規制のムーブメントの中、動物愛護の観点でも、受動喫煙のリスクへの意識が高まることを期待したい。
(文=編集部)