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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第25回】

ルーシー・ブラックマン殺人事件の決め手となった毛髪鑑定

 この事件は、殺害の猟奇性、特異性のため、初動捜査は難航した。だが警視庁は、ルーシーの両親から毛髪の提供を求め、毛髪によるDNA鑑定を行なった。

 毛髪鑑定とは何か? 毛髪鑑定に使われるSTR法は、DNA配列が繰り返す反復数(Short Tandem Repeat/短鎖縦列反復配列)を調べる鑑定法だ。子どもは、DNA配列が繰り返す反復数を両親からそのまま受け継ぐため、親子の血縁関係が科学的に確認できる。

 毛髪は、皮膚の中にある根毛と皮膚の外にある毛幹に分けられる。毛髪を強く引き抜くと、根毛に白い毛球(毛乳頭)が付いてくる。この毛球(毛乳頭)はタンパク質なので、核細胞(根鞘細胞)の中に存在するDNAを分析すれば、親子の血縁関係が簡単に判明する。

 この事件では、ルーシーの遺体に残存していた毛髪と両親の毛髪のDNA鑑定を進めた。その結果、親子関係が実証されため、ルーシーの身元が判明し、犯人を絞り込むことができた。

 ちなみに、毛髪鑑定には、DNA鑑定の他、毛の特徴や状態を調べる形態学的検査、ABO式血液型検査、染色の状況や薬物の使用状況を調べる元素分析検査がある。

 2001年3月3日、ルーシー・ブラックマンの遺体はイギリスに帰国。その後、裁判の動向を追いつつ、2005年3月23日、葬儀が執り行われている。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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