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【連載「死の真実が“生”を処方する」第18回】

「酔って寝ている」を放置は超危険! 普通に話していた人が突然死に至る急性硬膜下血腫の恐怖

 中学校の体育で武道が必修化され、多くの学校で柔道が取り入れられています。そこで頭部を打撲し、重篤な状態に陥ることがあります。

 実際にあった事例です。指導者が子どもに柔道を教えていたところ、その子は何度か投げ技を受けた後、動作が緩慢になったり、フラフラしました。しかし、指導者は休ませることなく柔道を続けさせました。その後、子どもは倒れ込み、救急車で病院へ搬送されました。急性硬膜下血腫で、生命に危険を及ぼす状態となっていたのです。

 柔道の投げ技は、1秒以内の瞬間のこと。投げられた人が頭を打っているか否かを確認することは困難です。動作が緩慢になったり、ふらついていたのは、すでに血腫によって脳が圧迫された状態なのです。この変化に気づき、すぐに病院へ搬送すれば助かります。

 別のケースです。ある男性が飲酒後、部屋の床で倒れていました。家族は「酔っ払って寝ている」と思っていましたが、なかなか目を覚ましません。あわてて救急車を呼んだところ、急性硬膜下血腫だったそうです。酔って転倒し、後頭部を打撲していたのです。

 このように、硬膜下血腫はさまざまな状況で起こり得ます。前述のように、早期に発見すれば十分に助けられる外傷です。身近な人が倒れたり、後頭部を打撲した場合には、必ず医療機関を受診させてください。

 本人が「大丈夫」と言っても、受診を勧めてください。飲酒後の転倒にも注意が必要です。家族から「あー、また酔っ払って床で寝ているのか」と思われて、見過ごされることがないように、日常生活に注意することも必要です。命にかかわることですから。


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一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)
滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授。厚生労働省死体解剖資格認定医、日本法医学会法医認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(理事)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)など。

連載「死の真実が"生"を処方する」バックナンバー

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