いかに少なくなったとはいえ、ぎょう虫が絶滅したわけではない。感染は子どもだけでなく、大人にも起こり得る。WHOによれば、感染者は世界で10億人以上いる。そのうちの8~13%が有症者で、年間1万人が重症の下痢などで死亡していると推定している。
アメリカでは、年間約4000万件が発生しているといわれており、外務省は海外渡航での寄生虫感染に対する注意を促している。集団検査がなくなる今、“輸入感染”も含めて、これから自衛の必要性もでてくるだろう。
では、ぎょう虫症を見極めるポイントを紹介したい。
・肛門のかゆみ
・かゆみによる寝不足。子どもの場合は、寝不足で落ち着きがなくなる。集中力が続かない。
・肛門周囲の掻きすぎによる湿疹
ほかには、腹痛や下痢が起きたり、虫垂炎の原因になることも。女性の場合は、まれに膀胱炎を引き起こすことがある。
これらの症状に疑いをもった場合、子どもであれば小児科、大人であれば内科を受診する。検査の結果、虫がいれば、いわゆる“虫下し”が処方される。卵には効力がないため、初回の後2~3週間後に2度目の服薬が必要だ。
感染者本人だけでなく、家族全員も服薬する。ぎょう虫の卵は、感染者の下着や布団についたり、肛門付近を掻いた指や爪を経由してドアノブや電灯スイッチなどに付着して伝染するからだ。
感染を防ぐには環境を清潔に整備
一方、駆虫薬の服用と共に、環境も整えたい。
・起床後すぐに肛門を洗い下着を取り換える。
・トイレ後や食事前に手を洗う。
・卵が爪の間に入ることを防ぐために、爪は短く切る。
・爪を噛んだり、肛門を掻いたりしない。
・布団の日干しやシーツの交換をまめに行う。洗濯はなるべくお湯で洗い、乾燥機を使う場合は、高温に設定する。
・ぎょう虫の卵は日光に弱いため、日光を部屋に入れる。
ぎょう虫の発生シーズンは、春と秋。今後、集団検査がなくなることで、感染リスクが高まる可能性もある。ぎょう虫への知識と備えはあったほうがいいかもしれない。
(文=編集部)