ぎょう虫感染者は世界で10億人以上 tashatuvango/PIXTA(ピクスタ)
丸の描かれたセロテープを、寝起きのお尻にペタリ。誰もが経験したあの「ぎょう虫検査」が、来年度からなくなるかもしれない――。
そもそもぎょう虫とは、白い糸のような姿をしている寄生虫だ。オスは2~5ミリ、メスは8~13ミリほどの大きさで、ヒトだけに寄生する。卵の状態で口に入り、小腸で幼虫になり大腸に移動して成虫となる。産卵の時期を迎えると、メスは直腸を通り、ヒトが寝ている間に肛門の周りに産卵する。
メスが一生の間に産む卵は1万個以上。産卵の終わったメスはそのまま死んでしまう。オスの寿命は約2週間、メスは2~3カ月。卵は気温30℃だと3日も持たないが、20℃くらいであれば40日以上も生き続ける。
あの“セロテープ検査”は、夜中に産みつけられた卵の有無を調べていたわけだ。
1959年には「4人に1人」がぎょう虫を“飼っていた”
ぎょう虫検査は、「学校保健安全法」に基づき行われる。同法は、インフルエンザや風疹など集団生活する学校などにおける予防すべき感染症を指定しており、ぎょう虫もその対象にされていた。
ところが、来年度から同法の一部が改訂され、その対象から外されたのだ。 指定除外の理由は、ぎょう虫感染の発生数が少なくなってきたことが挙げられる。
東京都予防医学協会年報によると、ぎょう虫検査は1961年に「学校保健法」(2009年に学校保健安全法に改題)で実施項目となった。現在のテープでの検査が組織的に行われたのが1959年。当時の感染率は、なんと25.6%。4人に1人がぎょう虫を“飼っていた”わけだ。
しかし、毎年の検査件数が増えるにつれ感染数は減少。文科省の「学校保健統計調査」によれば、昨年度の5歳児の寄生虫卵保有率は0.08%にまで下がった。陽性率が1%以下となった現在、すべての児童に検査を行う必要はないとの見解に至るのは仕方ない。
ただし、この数字はあくまで全国平均。検出数には地域性がある。北海道や東北での割合はゼロだが、島根県が0.7%、長崎県が0.4%、佐賀県と大分県が0.3%の発生が認められる。最も多いのは沖縄県で、その保有率は2.2%だ。
そこで、文科省も「それらの地域では、今後も検査の実施や衛生教育の徹底などを通して、引き続き、寄生虫への対応に取り組むべきである」(平成25年12月「今後の健康診断の在り方等に関する意見」)との見解。来年度以降の検査の必要性は、各市区町村の教育委員会が判断することになっている。