大久保 嘉人さんのインスタグラムより
川崎フロンターレのFW大久保嘉人さんの妻が、胞状奇胎(ほうじょうきたい)という病気で闘病中だと自身のインスタグラムで公表した。抗がん剤の治療が必要となり、その副作用で脱毛の可能性があるため、3人の息子とともに、頭を丸刈りにした写真も投稿している。
いったい胞状奇胎とはどんな病気なのか? 抗がん剤治療が必要なのはなぜか?
胞状奇胎は、胎盤や卵膜を作る絨毛(じゅうもう)細胞が異常に増殖し、子宮内部がブドウの粒のような奇胎でいっぱいになる病気で、水泡状になった絨毛がブドウの房状に見えるため「ブドウ子」と言われたりする。絨毛細胞から発生する絨毛性疾患のひとつで、発症頻度は約500妊娠に1回、300分娩に1回の割合で発生するといわれている。絶対数は減少傾向にはなっているがやはり一定の割合では発生する。
このほかの絨毛性疾患としては、胞状奇胎後に発生する腫瘍である侵入胞状奇胎(侵入奇胎)、悪性腫瘍である絨毛がんの3つが含まれる。
胞状奇胎は、受胎後すぐに現れることが多く2~4カ月頃から症状が現れ、子宮内の奇胎が急速に成長するため通常の妊娠より早くから子宮が柔らかく、大きくなるのが特徴だ。この病気ではほとんどの場合、胎児は形成されないか妊娠のごく早期に育たなくなってしまう。
治療としては、基本的に嚢胞化した絨毛組織を、子宮内から除去することが必要となる。1週間くらいの期間をあけ2~3回に分けて行われる子宮内容除去手術が一般的で、高齢で挙児希望のない場合には、子宮摘出が行われる。通常であれば、卵巣は摘出せずに子宮だけを摘出する。
しかし、胞状奇胎の8%ほどは子宮筋内に入り込んで存続する侵入奇胎となっていたり、3〜5%ほどは絨毛がんが発生することもあるため、除去後も経過を観察することが非常に重要になる。とくに40歳以上では侵入奇胎、絨毛がんの発生率が上昇する。このため、手術後に抗がん剤治療や放射線治療などで残存する胞状奇胎を叩く必要があるのだ。
大久保選手のインスタグラムによると「今年の夏、妻が流産してしまい、胞状奇胎だったということがわかりました。手術もしましたが、術後の経過が順調じゃなく入院しての治療が必要になりました。」とのこと。
この文章から推測すると、やはり子宮内容除去手術が行われ、術後検査の結果から抗がん剤治療が選択されたのだろう。
術後の検査結果から抗がん試合治療も
術後には①基礎体温:高温が14(±2)日以上続いたり、不整でないか②(血中・尿中)HCG値:正常値かどうか③胸部X線撮影:肺への転移がないか、などを定期的な通院で検査する。
特に重要なのは、HCG(ヒト絨毛性ゴナトドロピン)の値だ。HCGは、胎盤が形成されるとき絨毛組織から分泌されるタンパク系のホルモンのことをいい、正常妊娠の場合でもつくられるが、絨毛性疾患の場合は正常妊娠の場合よりもはるかに高値になる。このため術後のHCG値の推移が治療の大きな目安となるのだ。