ファストフードにはトランス脂肪酸がたっぷり (shutterstock.com)
マーガリンやショートニングなど化学的に作られた食用油脂や、それを使ったインスタント食品やスナック菓子など、さまざまな加工食品に含まれる「トランス脂肪酸」。多くの研究で、冠動脈疾患との関連性が指摘され、健康への悪影響が懸念されている。
世界各国では、それぞれの食習慣や疾病の背景に合わせて、食品への含有量規制や含有量表示といった処置を講じているが、今年6月、アメリカの食品医薬品局(FDA)は、加工食品への使用の全面禁止を発表した。
一方、イギリスでは、食品メーカーの自主性に任せる立場を取ってきたが、アメリカと同様、トランス脂肪酸が全面禁止となったらどうなるか?
ランカスター大学のKirk Allen氏らは、トランス脂肪酸の国民の健康や社会経済に与える影響、費用対効果について調査。その結果、アメリカのように加工食品のトランス脂肪酸を全面的に禁止が、最も好ましいと判明している。
この研究は、イギリスの国民食事栄養調査、低所得者食事栄養調査、統計局のデータなどを、疫学的な方法で規制の有効性を比較検討したもの。比較したのは次の4つについてだ。
①加工食品規制:加工食品へのトランス脂肪酸の使用を全面禁止
②食品表示規制:トランス脂肪酸の含有量を加工食品に表示
③レストラン規制:レストランのトランス脂肪酸の使用を禁止
④ファストフード規制:ファストフードのトランス脂肪酸の使用を禁止
主要な評価項目は、「冠動脈疾患による死亡を防ぐ」か「発症を遅らせる」ことができる件数である。さらに、規制によって政府や企業に生じる負担や、医療費、生産性の低下から生じる負担などを総合的に推定することで、社会全体への経済的な影響についても検討した。
その結果、①加工食品へのトランス脂肪酸の使用を全面禁止した場合、2015〜2020年で冠動脈疾患死を約7200例(2.6%)回避できるか、発症を遅らせることができると推定された。その他の規制では、②食品への含有量表示で最大約3500件(1.3%)、③レストラン規制で約1800件(0.7%)、④ファストフード規制で約2600件(1%)となっている。