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【連載第12回 死の真実が“生”を処方する】

"変死体"からの臓器移植! 今後も増える「移植医療」を潤滑に進めるために大事なことは?

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臓器提供意思表示カード

 皆さんのお知り合いで、「移植手術を受けた」という方はいらっしゃいますか?
 
 ひと昔前まで、「移植手術」と聞くと少し驚かれた方も多いと思いますが、今では標準的な医療の一つとなり、年間で腎移植は約1600件、角膜移植は約1500件も行われています。

臓器移植に関する法律の変化

 某日の深夜、男性が自宅トイレで倒れているところを家族に発見されました。家族の通報で男性は病院へ救急搬送されましたが、その後、死亡が確認されました。変死の連絡を受けた所轄署刑事課の方々は、ご遺体を署の霊安室に運び、検視を行いました。

 夜明け前に連絡を受けた私は、霊安室に赴いて検案業務に従事しました。そこでご家族と対面してお話を伺っていた時のことです。この男性が生前にアイバンクに登録しており、死後に眼球を提供したいという意思を表示していたことが判明したのです。すぐさま男性の所持品を調べると、アイバンクの登録カードが見つかり、生前の意思を確認することができました。私の全身に緊張感が走りました。

 日本では、1958(昭和33)年に「角膜移植に関する法律」が施行され、死体の眼球から角膜移植をすることが法的に可能になりました。その後、1979(昭和54)年に法律が改正され、変死体、あるいは変死の疑いがある死体からの眼球摘出は禁止されました。

 そして、1997(平成9)年に「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」が施行され、脳死体からの臓器移植が認められるようになりました。同法では、刑事訴訟法の第229条に基づく検視や、その他の犯罪捜査に関する手続の終了後、臓器を摘出することを認めています。

 そこには「犯罪捜査に関する活動に支障を生じることなく臓器移植の円滑な実施を図る」ことが明記され、法改正によって禁止されていた変死体からの角膜提供も可能になったのです。さらに、本人の生前の意思が書面で確認されなくても、家族の書面による承諾があれば摘出が可能となりました。

 先の男性のご家族は、死者の生前の意思に報いたいと眼球摘出に同意されたため、私は検視および死体検案終了後、ただちに臓器移植ネットワークに連絡を取りました。すると、しばらくして、東京都内の病院の眼科医が、器具を持参の上、ハイヤーで到着しました。移植担当医はご家族に改めて移植の説明をし、ご家族の同意のもと所轄署霊安室内で眼球摘出を行いました。男性から摘出された2つの眼球は2人の成人に角膜移植され、今も生き続けているとのことです。

移植を成功させた要因は何だったか?

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