MENU

【連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第7回 】

スマホを手放せないあなたは「VDT症候群」? "強いエネルギー"ブルーライトの危険性!

 コンピュータのディスプレイを長時間にわたり見続ける作業することでも、以下の3つの症状が生じる可能性があります。

①ドライアイ、充血、視力低下など眼症状
②首、腰、肩のこり、頭痛など身体症状
③食欲減退、不安感、抑うつ症状など精神的症状

 これらの症状は、スマートフォンを長時間にわたり、不適応な環境で使用することで起こる症状に非常に似ています。厚生労働省は、この症状をVDT(Visual Display Terminals)症候群と称して、健康管理のガイドラインを作っています。このガイドラインを実践することで、スマホ頭痛の症状はある程度改善すると思います。思い当たる方は、以下の対処法を試してみてください。

①スマホ使用時の照明と採光
 スマートフォン使用時の室内の照明及び採光については、明暗の対照が著しくなく、まぶしさを生じさせない方法をとる。すなわち、スマートフォンに置き換えるとディスプレイ画面と周辺の明るさの差が大きいと眼の負担になると考えられ、太陽光の下での使用や、夜間の暗い所でのスマートフォンの使用は、極力避けることがいでしょう。

②スマホ・ディスプレイ環境の調整
 スマートフォンのディスプレイは、長時間見続けると、点滅する画面や、ディスプレイに表示される文字や図形が見にくくなったり、光の反射が起こることが光過敏となって、頭痛を引き起こすことがあります。ブルーライト除去フィルムの装着によって、効果がある人もいるでしょう。

③スマホ使用時の姿勢に注意
 極端な前傾姿勢やねじれ姿勢を長時間継続しないよう注意が必要です。また前述のように、なるべく頭を上げて、頸部に負担のかからない姿勢が重要です。さらに、ゲームなどの長時間にわたる画面の注視は、自然と巻き肩姿勢になるので、避けるべきです。

 そもそも人類は夜暗くなったら「寝る」、明るくなったら「起きて活動する」という概日リズムを持って進化してきました。しかし、現在の人類の活動は、昼夜の境目がなくなりつつあります。このような生活リズムの変化は、ここ100年のことです。そこに我々の生物学的な進化は追いついていません。

 ですから、みなさんは自分自身で、概日リスム(生活スタイル)をコントロールして生活する必要があるのです。またすでに乱れて、困っている人は、専門医に相談するのもよいでしょう。

※参考文献
1)Hauge AW1, Kirchmann M, Olesen J. Cephalalgia. Characterization of
consistent triggers of migraine with aura. 2011 Mar;31(4):416-38.
2)Tatsumoto M., Eda T., Ishikawa T., Ayama M. and Hirata K. 2013. "Light of
intrinsically photosensitive retinal ganglion cell (ipRGC) causing migraine
headache exacerbation." Cephalalgia 33 (Supp. 8) : 2

連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」バックナンバー

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学病院遺伝子診療部・脳神経内科 臨床教授、近畿大学総合理工学研究科遺伝カウンセラー養成課程 教授。1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、
2023年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

西郷和真の記事一覧

西郷和真

関連記事
アクセスランキング
専門家一覧
Doctors marche