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【連載 薬は飲まないにこしたことはない 最終回】

副作用のリスクが伴う薬を、それでもあなたは飲み続けるのか?

 薬は痛みや症状を抑えてくれるが、自分の身体の声(=アラーム)にふたをする。問題があるから症状というアラームを発しているのに、それを封じてしまうのだ。そして無理を重ね続けると身体が反乱を起こし、急に倒れたり、胃潰瘍や肝機能障害などの健康障害が出てきたりなど、より大きなアラームが出る場合もある。薬に頼らず健康で長生きするために最も大切なのは、身体の声を聞くことだといえるだろう。

 また、痛みや症状は他の大きな病気を防ぐチャンスでもある。帯状疱疹を例にとってみよう。かつて患者のほとんどが高齢者であったが、最近では若者も増えている。帯状疱疹は、子どもがかかりやすい水疱瘡のウイルスが体内の神経節に残り、加齢、過労、病気などの免疫力低下により活発化して起こるものだ。神経に沿って帯状に赤い発疹や水ぶくれが出現し、強い痛みを感じる。

 本来かかることのない若者に発症する原因は、不摂生、栄養不足、ストレスなどによる免疫力の低下だ。そして、このつらい帯状疱疹には高価だがよく効く薬があるため、多くの患者は治るとまた元の生活に戻ってしまい、また免疫力が落ちていく。

 だがこの免疫力の低下は、帯状疱疹だけでなく他の病気を引き起こす可能性もある。1回症状が出たら、それをきっかけに生活を改善し免疫力を高める努力をしてほしい。それは薬を飲まなくてすむだけでなく、他の大きな病気を防ぐことにもなるのだ。

 これだけのリスクを知りながら、人はなぜ薬を飲んでしまうのか。「風邪をひいた時に処方薬が効いた」と言う人もいるが、薬は症状を抑えただけで、治ったのは服用している間に免疫力が風邪と闘ったからだ。医療が発達したことで見落とされてしまいがちだが、私たちの身体の中には本当に病気を治してくれる自然治癒力という"名医"がいる。それでも多くの人が安易に薬を飲んでしまう大きな理由は、「薬を飲まなければ治らない」という暗示にかかっているからだろう。まずはこれを頭から排除する必要がある。

 私は「絶対に薬を飲んではいけない」と言っているわけではない。本当に辛い時は仕方がない。だが、常に携帯し頻繁に服用するのはやめるべきだ。薬は症状の抑制以外の作用を持つ可能性もある。こうしたリスクを知ったうえで薬を飲み続けるか飲まないかは、あなた自身の判断に委ねられている。 


連載「薬は飲まないにこしたことはない」バックナンバー

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士(米AHCN大学)、ボディトレーナー、一般社団法人国際感食協会代表理事、ハッピー☆ウォーク主宰、NPO法人統合医学健康増進会常務理事。1959年、千葉県生まれ。明治薬科大学卒業。薬剤師として医療の現場に身を置く中で、薬漬けの医療に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を活かし、薬に頼らない健康法を多方面に渡り発信している。その他、講演、セミナー、雑誌等での執筆も行っている。最新刊『薬を使わない薬剤師の「やめる」健康法』(光文社新書)が好評発売中。

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