沼崎ディレクター役の小泉孝太郎と白井刑事役の豊原功補 wowow ホームページ『死の臓器』より
WOWOWで連続5回放送の医療サスペンス『死の臓器』には臓器売買をめぐって暗躍するブローカーが登場する。しかし、そんなドラマの内容をはるかにしのぐ国家的な臓器売買の非人道的な現実が日本のすぐ近くにある。
第74回ピーボディ賞の授賞式が5月31日にニューヨークで行われ、ドキュメンタリー部門・教育部門で中国の国家ぐるみで移植臓器を供給しているのでないかとするドキュメンタリー映画『人狩り(Human Harvest)』(旧題・ダビデとゴリアテ)が受賞した。この模様を報じた番組(https://www.youtube.com/watch?v=txvyq2ckwBY)
ピーボディ賞はアメリカのメディア(テレビ・ラジオ・ウェブサイト)の優れた作品に贈られ、放送界のピューリッツァー賞とも呼ばれ、権威あるアメリカ放送界の最高の栄誉とされる賞である。日本のNHKなども過去に何度か受賞している。
監督である中国系カナダ人の李雲翔(leon Lee)氏は「制作の過程であまりにも衝撃的な証拠を前に、一時は現実と向き合えなくなったため、事実を覆せる証拠を求めていた」と受賞のスピーチを行った。映画「人狩り」は、中国国内で囚人などから強制的に臓器の収奪をしているというすぐには信じられない、「臓器狩り」の証拠を次々と暴いていく驚くべき内容だ。
調査に当たった2氏がノーベル平和賞候補に
中国では十数年前から臓器移植の件数があまりにも急激に増加している。しかし、ドナー(臓器提供者)の報告がされることもほとんどなかった。しかも、外国人患者向けの臓器移植のあっせんサイトが多数存在し、臓器別の値段を明示し「若くて新鮮な臓器が早ければ数週間以内にみつかる」などとアピールしていた。こうした状況はかなり早い時期から国際的な注目を集め、疑問視されていた。
しかし、中国国内の状況は非常に分かりにくく、一部の人権団体や調査機関などもその実態解明に取り組んでいたが、2006年はじめから、中国の収容施設での臓器収奪を告発する内部関係者の証言が相次いだため、同年、カナダの元アジア太平洋地区担当大臣デービット・キルガー氏と人権弁護士デービット・マタス氏が「臓器狩り」の独立調査団を結成した。
この映画では両氏の調査活動などの模様や中国で臓器移植を実際に受けた外国からの患者、臓器の摘出や売買などを目撃している元受刑者や元警官などの証言が盛り込まれている。「ある女性が麻酔なしで臓器を摘出された現場に立ち会った」と告白する警官のショッキングな証言まである。
デービット・キルガー氏と人権派弁護士デービット・マタス氏は、この問題を世界に公にしたことで2010年のノーベル平和賞の候補者に推薦されている。
両氏は独立調査報告書を作成し、臓器強制摘出・売買は、中国で組織的に行われているという結論を出した。現在、その調査報告書は18カ国の言語に訳され、カナダで『Bloody Harvest, The killing of Falun Gong for their organs』(戦慄の臓器狩り)というタイトルで出版され、日本でも『中国臓器狩り』(アスペクト)として翻訳されている。