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【連載第3回 東洋医学と西洋医学の接点】

抗がん剤治療で激減した白血球数を鍼灸で回復、治療継続が可能に

 これは2つの点から説明できる。ひとつには鍼灸治療が身体全体のバランスを整える調整作用があり、がん患者さんの気を補い、体力を増進することができるということ。ふたつめは、白血球を上昇させる特効穴「扶正五要穴」の力である。このツボは私の家伝秘穴であり、胸骨の両側に、第1肋骨から第五肋骨の肋間、左右にある合計10穴である。

 扶正五要穴は、人の胸腺の内部の状態が表面に出現する(体表投影)部位に相当する。胸腺は人間の免疫系のひとつであり、Tリンパ球と呼ばれる白血球をつくっている臓器で人の免疫機能とつながっている。

 扶正五要穴に鍼灸すれば、人間の免疫力を調え、体力を増加し、白血球を上昇させることができるだろう。私は父が長い臨床経験の中で見つけた特効穴「扶正五要穴」の効果を検証しようとした。

 大学院生時代、マウス20匹に薬餌を食べさせ、酷しい下痢を発症し、痩せて、震えが起こり、食欲ない虚弱モデルを作った。そのマウスを2群に分け、一方の10匹は、扶正五要穴の相当部位に灸をし、他方は何もしない。1週間後、灸をしないマウスのすべてが死亡し、灸をしたマウスの2匹は死亡し、残る8匹では食欲が戻り、下痢も止まり元気になった。灸をしたマウスの中には1カ月後、妊娠ができた個体があり、その回復の効果を実感した。
 こうした実験結果や実際の臨床結果から、扶正五要穴の有効性が強く示唆される。


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孫 迎

孫 迎(そんげい)
1985年中国上海中医薬大学卒業。元WHO上海国際針灸養成センター上海中医薬大学講師、上海市針灸経絡研究所主治医師1987年糖尿病について優秀な研究成果で、中国厚生省の三等奨を獲得。来日後、早稲田大学大学院臨床心理学修了。中国医学開発研究院理事長、専任教授。呉迎上海第一治療院副院長。
●得意分野:婦人病、不妊症、痛症、運動系、リウマチ、内科、内分泌科等。

連載「東洋医学と西洋医学の接点」バックナンバー

呉澤森(ご・たくしん)

呉迎上海第一治療院院長。中国上海中医薬大学院卒業。元WHO上海国際針灸養成センター講師、元上海針灸経絡研究所研究員、主任医師。1988年、北里東洋医学研究所の招待で来日。現在、多数の針灸専門学校の非常勤講師を務め、厚生大臣指定講習会専任講師、日本中国医学開発研究院院長、主席教授、日本中医臨床実力養成学院院長なども兼務している。『鍼灸の世界』(集英社新書)が有名。
●得意分野:不妊症、内科全般、生殖泌尿系統、運動系、脳卒中後遺症、五官科(目(視覚)・耳(聴覚)・舌(味覚)・鼻(嗅覚)・皮膚(触覚)。特に眼科)等

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