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【連載第8回 慢性腰痛を深く知る】

慢性的な腰痛持ちは「座り方」が悪い!腰に負担がかからない正しい姿勢とは?

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腰に負担がかからない適切な座り方ができない人は、バランスボールを椅子代わりに使ってみよう shutterstock

 「腰痛持ち」という言葉があるように、なかなか腰痛と縁が切れない人が多い。ぎっくり腰が治ったのもつかの間、再びぎっくり腰になり......、それを何度も腰繰り返して、やがて「次はいつぎっくり腰になるのか?」という不安がストレス性腰痛を招き、常に腰痛と縁が切れない状態になる人も少なくない。

 そうなってしまうのは、腰痛を再発させるような生活をしているからだ。いくら治療しても、それでは腰痛は治らない。自分の日々の生活の中のどこに、腰痛の原因が隠れているのかを知って、その原因を排除する努力をしなければ、どんな良い治療を受けても元の木阿弥、意味がない。

腰痛持ちは姿勢が悪い

 

 腰痛持ちは、まず日常の姿勢が間違っていることに気づくべきだ。まずは自分が座っている姿と歩いている姿を横からビデオで撮影して、それを見てみるといい。顎を突き出して、首から先に歩いていたり、「良い姿勢」のつもりで胃を突き出していたり、ウエストの後ろが反っていたり......。腰痛歴が長く、腰痛を恐れて、おっかなびっくり動いている人は、猫背になったり、反り腰になったりしがちだ。痛くない姿勢をとろうとして、実は腰に悪い姿勢になっていることが多い。

 本当に良い姿勢は、壁にかかとをつけて、顎を引いて立ち、女性であってもウエストの後ろに手のひらの厚みがようやく入るかどうかくらいに壁につけた姿勢。おなかもお尻もひっこめる。肩が上がって首が埋もれやすいので、肩をいちど思いっきり上げてから下すといい。

 ちなみに、このときにいくらおなかを引っ込めてウエストの後ろを壁につけようとしても、手のひらがスカスカ楽に入る場合は、骨盤が前傾している反り腰。逆に手のひらがほとんど入れられない場合は、骨盤が後傾している丸くなった腰。どちらも腰痛の原因になるので、日々鍛えて、骨盤の傾きを正していく必要がある。

 実際に壁に背をつけて正しい姿勢を作るときは、他人に見てもらいながらやってみるといい。良い姿勢を作ったつもりでも、すぐに気が抜けて反り腰に戻ったり、首が前に突き出たり、どこかが崩れる。すべてのポイントを守った良い姿勢は、5秒と維持できていないことを指摘されるだろう。この姿勢を維持するのは、慣れないうちは非常に難しい。腹筋と背筋が相当きつい。まっすぐ立っているだけでも難しいくらいだから、その姿勢で歩こうと足を一歩前に出したとたんにすべて崩れる。その姿勢で歩こうとしても、慣れないうちは顎とうてい無理だろう。エレベータに乗ったときなど、背中を壁につける機会があるときに意識して繰り返していくと、次第に身についてくる。

その座り方が腰痛を引き起こしている!

 立った姿勢、椅子に座った姿勢、寝ている姿勢なら、どれが腰の負担にんるか? 寝ている姿勢が最も楽であることは予想通りだが、椅子に座った姿勢が立った姿勢より楽な姿勢だと思っていないだろうか? 実は腰にいちばん負担がかかるのは、椅子に座った姿勢だ。

 椅子に座った姿勢は、正しい姿勢であったとしても腰の負担になるが、間違った姿勢ならもっと負担は大きい。たとえば、パソコン作業の際に、ついモニター画面のほうへ身を乗り出して、横から見ると背中と太ももで鋭角を作った姿勢で作業していないだろうか? 椅子に浅く腰掛け、椅子の背から背中が離れた姿勢になってないだろうか? ずるっとお尻は椅子の前面にずれ、斜めに椅子の背にもたれ、首だけを起こしていないだろうか? デスクや椅子の腕に片肘をついて顎を支える、頬杖をついた姿勢になっていないだろうか? 足を横に流して、上半身は逆側に傾けていないだろうか? これらすべて、体重のかかり方がずれていて、背骨に負担をかけている。

 椅子に座るときの正しい姿勢は、しっかりと足の裏を床につけ、椅子の座面に当たっている骨、「坐骨」に体重をまっすぐ乗せる。足を組むのはNG。足の裏でも体重を支える意識を持とう。足を床から浮かせてブラブラしていたら、その足、膝から下の重さ、たとえば体重60kgの人なら3.6kgほどが、膝や太もも、腰にかかってくる。腰を大事にしたいなら、きちんと足の裏や坐骨に体重を預け、腰に負担をかけないようにすべきだ。「良い姿勢」のつもりで、ウエストの後ろが空いた反りかえった姿勢にならないように注意しよう。椅子の背に背中をしっかりとつけることが大切だ。

 高額な良い椅子は、背もたれの形が背中を上手に支えるようにできている。背中を背もたれにぴたっとつけよう。どれほど高額な良い椅子にしたところで、せっかくの素晴らしい背もたれから背中が離れていては何の役にも立たない。会議室やホールのパイプ椅子など、あまり良くない椅子に長時間座らなければならないときは、薄い座布団をふたつ折にして、椅子のいちばん奥に置いて、そこに坐骨を乗せ、お尻より膝が低くなるようにすると、自然に背筋が伸びた適切な姿勢が取れる。背もたれのある椅子なら、フェイスタオルを1枚、1回畳んでから丸めて、ウエストの後ろに入れ、それを落とさないようにしよう。前のめりに身を乗り出す癖がある人は、すぐにタオルが落ちるはず。そのたびにタオルを背中に入れ直して、正しいポジションに戻そう。

姿勢を変えることが腰痛予防のポイント

 

 どんなに良い姿勢でいても、長時間、同じ姿勢でいると、腰に悪い。できれば30分から1時間に1回は、椅子から立ち上がり、10歩ていどでもいいので歩いて、腰をほぐそう。

 どうしても椅子で適切な姿勢を保てない人は、バランスボールを椅子代わりに使う方法もある。バランスボールは、正しい姿勢でないとボールが転がってしまう。背筋をしっかりと伸ばして座り、足は開いて、床にしっかりとつけて安定させよう。姿勢が崩れるとボールが転がりそうになり、姿勢を正しく直す......。これを繰り返すことにより、同じ姿勢で固まったままになることも避けられる。

 座っていると腰が痛くなる人の場合は、腰を反らす体操を行おう。足を少し開いた姿勢で、膝を曲げずに両手をお尻にあて、息を吐きながら3秒ほど上体をゆっくりと反れる限りのところまで反らす。痛みがある背骨がどのあたりとわかっている場合は、その部分を意識する。背骨と背骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板の中にある髄核(ずいかく)が、前かがみの姿勢ばかりしていることにより、後ろにずれてしまっている可能性があるので、それを前に戻してやるイメージだ。1、2回行えばいい。


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森田慶子

森田慶子(もりた・けいこ)
経験20年の医療ライター。専門医に取材し、その分野を専門外とする一般医向けに発信する医師向けの医学情報を中心に執筆。患者向けの疾病解説の冊子や、一般人向けの健康記事も数多く手がける。これまでに数百人を超える医師、看護師などの医療従事者から、最新の医学情報、医療現場の生の声を聞いてきた。特に、腰痛をはじめとする関節のトラブル、糖尿病、高血圧などの生活習慣病、うつ病や認知症などの精神疾患、睡眠障害に関する記事を多く手がけてきた。

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