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戦いは次のフェーズ「菌の逆襲!」に突入。抗生物質が効かない菌が続出!?

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2050年には耐性菌による年間死亡者は1000万人にも!? shutterstock.com

 地球には、目に見えない無数の菌が生息している。私たちの体内さえも菌だらけだ。たとえばヒトの腸内には100種類以上、100兆個以上の菌が生息しているという。その中にはビフィズス菌や乳酸菌のように、腸の働きを助ける、私たちヒトにとって役立つ菌もある。

 いっぽう共生可能な菌とは違って、結核菌のように、ヒトの体の組織を破壊してしまうものもあり、それらは病原菌や黴(ばい)菌などと呼ばれる。結核をはじめ、ペスト、チフス、赤痢、コレラなど病原菌によって伝染する病気は、長い間、人類にとって大変な脅威だった。昔の人は菌の存在を知らなかったから、どうしてこういう病気になるのかはわからなかったけれど、とにかく、治る人より死ぬ人の方が多い恐るべき病だったのだ。

 顕微鏡が発明されて、やっと病原菌の存在が知られるようになっても、その菌を撃退する方法は容易にわからなかった。

偶然から生まれた世界で初めて抗生物質

 1928年、イギリスの細菌学者A.フレミングが、ブドウ球菌を培養していたシャーレにうっかり青カビをはやしてしまった。しかし、よく見るとカビの周囲の菌が死滅しているではないか! こうして青カビに殺菌物質が含まれていることを発見し、ペニシリンと名づけた。しかし、その物質を取り出す方法がわからず、1940年になってやっと別の科学者が粉末状に分離することに成功。ペニシリンは晴れて薬となった。

 このペニシリンは食中毒や、肺炎、淋病、髄膜炎などに素晴らしくよく効いたので、科学者たちはこぞって、さまざまな菌やカビの中に、第二、第三のペニシリンを探し成功した。たとえば、放線菌から抽出されたストレプトマイシンは結核菌に作用し、結核の死亡者はみるみる激減したのだ。

 これらの殺菌物質は「抗生物質」と呼ばれ、ついにペストもチフスも赤痢もコレラも死病ではなくなった。輝かしい抗生物質が、20世紀最大の発明のひとつに数えられたのも当然だろう。

菌だけでなくウイルスや原虫も病気をひきおこす

 外部の微生物によって引き起こされる病気を感染症と呼ぶ。微生物が体内に入ることで、伝染(うつ)る病気である。

 じつは、菌以外にも感染症を引き起こすものがある。ウイルスだ。ウイルスは電子顕微鏡が発明されるまでは、その存在を知られていなかった。ウイルスは非常に変わった存在で、栄養をとることも排泄も呼吸もしない。異論もあるが、私たち人間は約60兆個の細胞からできているし、菌も単細胞とはいえ、細胞生物だ。しかし、ウイルスは細胞ではなく、もっと単純な構造をしている。さらに菌は細胞分裂によって増えることができるが、ウイルスは増殖できない。そこでウイルスは生物ではない、ということになっている。細菌にしろ、魚にしろ、植物にしろ、人間にしろ、また方法が細胞分裂であっても有性生殖であっても、とにかく生物とは自己増殖するものだとされているからだ。

 それでは、インフルエンザウイルスとかエボラウイルスなど、ウイルスがどうやって私たちの肉体を損なうかといえば、自ら増えることができないので「寄生」するのだ。ヒトの細胞膜にくっついて、細胞の中に自分のDNA(かRNA)を注入する。注入された細胞は、その遺伝子情報に従ってせっせとウイルスの元となる物質を作り、それがどんどんウイルスとなり、増殖したウイルスは膜を破って飛び出す。

 このウイルスを退治するには抗生物質でなく、ワクチンを使うことが多い。ワクチンは、あらかじめ弱めたウイルスを体内に入れて、体の免疫システムに覚えさせるもので、こうしておけばウイルスの襲撃に遭っても免疫システムが撃退できることが多いのだ。

 さらに、マラリアのように原虫が病原体の病気もある。原虫は菌のように単細胞生物だが、べん毛を動かして動物のように動きまわる。

 このように、感染症を引き起こす病原体には、いろいろなタイプがあって、私たちは、それらひとつひとつを撃退することで病気と闘ってきた。

病原菌は、変化して攻めてくる

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