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【連載第13回 薬は飲まないにこしたことはない】

皮膚から有害物質が侵入? 貼り薬・塗り薬・入浴剤の使用には注意が必要

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入浴剤に含まれる有害物質が肌から浸透することも shutterstock

 これまでさまざま薬の危険性について述べてきたが、肩こりや腰痛の時に使用する湿布などの貼り薬や塗り薬に関しては、あまり"薬"だと意識せずに使っている人も多いのではないだろうか。当然これらも薬であり、身体にとっては紛れもなく異物である。

 貼り薬や塗り薬など、皮膚から薬を吸収させ成分を体内に送り込むものを経皮薬と呼ぶ。薬局で買える経皮薬の代表格は、消炎鎮痛薬やニコチンパッチなどである。ニコチンパッチは禁煙に成功したい人が使用する貼り薬で、皮膚からニコチンを補充してその血中濃度を一定に保ち、喫煙衝動を抑えてくれるものだ。貼付部位に厳密な決まりはなく、簡単に使えるため、女性の使用者も多い。しかし、ニコチンを皮膚から浸透させて血中濃度を上げることは、ニコチンが血流に乗って体内を循環することなのである。

 もちろん、他の貼り薬や塗り薬を使用する場合も、皮膚から吸収された薬の成分が、患部だけでなく血流に乗り全身を巡ることになる。飲み薬と同様、貼り薬であっても、身体に薬という異物が入ることには変わりはない。

 わたしたちは「直接、体内に入れる飲み薬のほうが、副作用リスクが高いかもしれない」と考えがちだが、飲み薬には、「1日の用量や回数、いつ飲めばよいか」などが詳しく決められており、飲み過ぎないよう自己管理できる。しかし、経皮薬には使用量が細かく設定されていないため、多くの人が肩や腰が痛くなると消炎鎮痛薬を体中に貼ったり塗ったりしてしまう。このように使用限度を考えずに使うことは、副作用リスクを高めることにもなるので注意が必要だ。

入浴剤の色が鮮やかなのは有害物質のせい

 皮膚を通して体内に影響を及ぼすものは薬だけではない。日常生活で当たり前のように使う入浴剤もそのひとつ。温泉成分やトウガラシ、ショウガ成分などが入り、「疲労回復や肩こり、腰痛、肌荒れ、冷え性、打ち身、リウマチ、肌荒れなどに効く」とパッケージに書かれているが、その効能を見て商品を購入する人もいるだろう。

 入浴剤が医薬部外品として効能を記載できるのは、塩化ナトリウム(食塩)や炭酸水素ナトリウム(重曹)など14種類の成分が合計で70パーセント以上配合されている場合だ。極論をいえば、キッチンに常備されている食塩が70%以上配合されていれば、臨床的に証明されていなくても、効能を示すことができる。
 
 だが、入浴剤の問題点はこれだけではない。入浴剤のなかには湯船に入れると、お湯が緑や青、オレンジ色など美しい色に変わるものがあるが、実はこの変化は合成色素によるもので、多くの場合、有害物質のタール色素が使われている。そのため、こうした入浴剤の入った風呂につかると、皮膚の汗腺や毛穴からタール色素が体内に入り、血管にも侵入し、副作用が起こる可能性が出てくる。また、温かいお湯に入り血行がよくなると、皮膚からの吸収力も高くなるのでリスクも増えるだろう。

 さらに、液体入浴剤は腐敗しやすいため、パラベンという有害な防腐剤が使われることもある。ある実験で、パラペンをマウスのえさに混ぜて経口投与したところ、多くのマウスの死亡が確認されたという。

 身体を健康にするために入浴剤を使用したのに、有害物質が蓄積されるなどの逆効果にもなりかねない。アトピーが悪化した原因が、アトピーを治すために使った入浴剤だったという例もある。

 多くの人が食物の合成着色料には敏感に反応するのに、お風呂で皮膚から浸透する合成色素には無頓着というのも妙なことだ。入浴剤や薬用と記載されている製品については、こうしたことを十分考慮してから購入を検討したほうがよいだろう。

連載「薬は飲まないにこしたことはない」バックナンバー

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士(米AHCN大学)、ボディトレーナー、一般社団法人国際感食協会代表理事、ハッピー☆ウォーク主宰、NPO法人統合医学健康増進会常務理事。1959年、千葉県生まれ。明治薬科大学卒業。薬剤師として医療の現場に身を置く中で、薬漬けの医療に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を活かし、薬に頼らない健康法を多方面に渡り発信している。その他、講演、セミナー、雑誌等での執筆も行っている。最新刊『薬を使わない薬剤師の「やめる」健康法』(光文社新書)が好評発売中。

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