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【連載第3回 慢性腰痛を深く知る】

つらい慢性腰痛の本当の原因はストレス!? 「気のせい」ではない、心因性の痛みとは?

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自分の腰痛の真の原因を知らずにいると深刻な結果になることも... shutterstock

 「腰痛でさあ......」と話すと、わらわらと「自分も腰痛だ」という人が現れる。40歳代から60歳代のうち、約4割が腰痛に悩んでいるのだから、腰痛の話に、自分の腰痛の話で返される率は極めて高い。

 病院に行っても「異常なし」と言われ、痛み止めを処方されるだけで根本的には治してもらえず、鍼治療やマッサージ、さらにはさまざまな運動法など、良い治療法を求めて、多くの人が彷徨っている。だから腰痛の話は、おおむね「腰痛のとき自分はどうやって痛みを軽減させているか」とか、「どこの誰の腰痛治療がいいか」という話に行きつく。

他人の経験談が役に立つとは限らない

 だが、腰痛は実にさまざま。一言で腰痛と言っても、腰の上のほうが痛む人もあれば、尾てい骨あたりが痛む人もいる。前にかがむと痛む人もあれば、背中のほうに反ると痛む人もいる。

 さらに原因は、もっとさまざま。つまり、他人の経験談が役に立つとは限らない。むしろ逆効果になることも多い。自分の腰痛の真の原因を知らないまま、むやみに他人が「これがいい」と勧める方法を試していると、腰痛を悪化させることもままあり、ときには命の危険すらある。

 腰痛を感じたとき、誰もが「腰が痛みを発している」と考える。ところが、実は腰が痛いのではなく、尿路結石や膵臓炎など、内蔵の病気による内蔵の痛みを、腰や背中の痛みと感じている場合も少なくない。特に姿勢を変えても痛みに変化がない場合は、内臓の病気の可能性が高い。

 また、腹部の大動脈の径が拡大し、こぶ状になる腹部大動脈瘤は、背中から腰にかけて広い範囲の痛みとして感じられることがある。腹部大動脈溜に特有の症状がほとんどないため、腹部大動脈瘤で受診する人は少なく、他の疾患の受診時に偶然発見されることが多いくらいだ。しかし「ただの腰痛」と思って放置して、腹部大動脈瘤が大きくなって、破裂してしまうと、死に至る確率は極めて高い。腹部大動脈瘤はコレステロールや炭水化物のとりすぎやアルコールの飲みすぎによる動脈硬化が原因になることが多く、メタボリックシンドローム気味の人は要注意だ。

 腰痛を甘く見ると、怖い病気が隠れているのを見逃す危険があるので、腰痛に危険な病気が隠れていないか確かめるために、一度はきちんと受診をすべきである。

3つの原因が重なって腰痛を引き起こす

 実際に腰が痛む場合の原因は、大きく3つある。骨や椎間板などの異常という「器質的な痛み」、末梢神経、脊髄、脳などの神経の障害という「神経障害性の痛み」、ストレスやうつ不安などによって起こる「心因性の痛み」だ。

 そして原因は、1つとは限らない。しばしば2つ、あるいは3つの原因が重なって腰痛を引き起こしている。たった1つの「ピンポイントの原因があり、それを突き止め、そこさえ治せば解決する」という幻想を抱いていると、いつまで経っても納得できる医師や治療に出会えず、慢性腰痛とたって、より良い治療を求めて次から次へと医療機関を変える、いわゆる「ドクターショッピング」をすることになる。

 誰もが腰痛の原因として思い浮かべるのが器質的な痛み。物理的に骨や椎間板を傷めるケースばかりではない、化膿性脊椎炎や結核性脊椎炎など、脊椎の感染症で腰痛が起こることもある。感染症の場合、一般には発熱を伴うが、熱があまり上がらないこともある。全身がだるかったり、安静にしていても痛む「自発痛」があったりする場合は、特に感染症による腰痛が疑われるので早めに受診したい。

 神経の障害は、脊椎を通っている神経が物理的に圧迫されている場合、悪化させると排尿障害や排便機能の異常など重大な結果を招くことがある。足の痺れや麻痺があり、歩けなかったり、安静にしているのに痛みが強まったりする場合には、整形外科、特に腰痛を得意とする、脊椎の専門医できちんと調べたい。

痛みを感じる仕組みに隠れた、心因性の痛みを引き起こす仕組み

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