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映画『みんなの学校』〜発達障害の子供も皆と同じ教室で。ある公立小学校の画期的な取組み

 大阪市立大空小学校では、発達障害の子や感情を上手にコントロールできない子も、特別支援学級ではなく普通学級で他の児童と一緒に学んでいる。2012年当時、全校児童約220人のうち特別支援対象の子供は30人超。ほかの公立小学校の割合よりもはるかに多い。

 そんな同校が目指すのは、"不登校ゼロ"。どんな子も「居場所がある」と感じられるよう、同級生や教師、保護者、地域のボランティアの人々が彼らの支援に取り組み、実際その成果も表れている。

 "その街に住む子供なら誰でも通える"大空小学校の1年間を追った本作は、文化庁芸術祭賞などを受賞したテレビドキュメンタリーだ。2月21日(土)より、全国の映画館でも上映される。

「居場所を見つける」ことが解決の糸口に

 同校では、教室に居ることが不安で外に飛び出してしまう子、頻繁に暴力を振るったり暴言を吐いたりする子、協調性のない子たちが、いつも何かしら騒動を起こし、先生たちは気が休まる暇がない。

 木村泰子校長は、現場に出て体当たりで子供たちにぶつかっていくタイプだ。この学校で机上の空論など通用しない。甘やかさず、悪いことは悪いと叱る。しかし、必ずその子が何とかがんばれるよう声をかけ、正しい方向に導く。厳しいながらも愛情に満ちた指導に、教育者としての強い信念が感じられる。

 生き生きした子供たちや学校関係者に対する制作側のまなざしは、とても温かい。教育現場のありのままの様子を撮影したこの作品には、「やがて明るい未来が開けるだろう」と感じさせる何かが流れている。

 ところどころに散りばめられているのが、"成長"というキーワードだ。成長するのは子供だけではない。慣れない状況に戸惑い、自分を見失いがちな若い教師に対し校長は叱咤激励し、ほかのベテラン教師と一緒に見守っていく。そうした大人同士の強い信頼関係も、この学校の強みのひとつといえるだろう。

 特別支援対象の子供たちは、一進一退を繰り返しながらも確実に成長する。クラスメートたちも彼らと関わり合うことで、相手の気持ちを推し量ることや、自分と少し違っていても受け入ることを、実践を通して学んでいく。「自分の子供が、"問題のある児童"から傷つけられたり、学習を妨げられたりしたらたまらない」という親の気持ちもわかるが、一緒に学ぶことは心の豊かさを身につける機会にもなる。「彼らに関わることで周囲の子供たちが変わり、その親の意識を変え、地域全体を変えていく」という教育専門家の言葉が印象的だ。

学校のサポートを離れた後の支援対象児の将来は?

 特別支援が必要な子供の状況はさまざまだが、発達障害を持つ子の場合、原因は主に何らかの脳の機能障害で、完治は困難でも行動療法や薬物療法などで症状の軽減は可能だといわれている。

 もちろん大空小学校は医療機関ではない。しかし、ここで周囲とのコミュニケーションを学ぶことも、発達障害児、またその他の支援対象の子供にとって、かなり重要な意味を持つのではないだろうか。

 親身になり助けてくれた教職員や同級生、地域ボランティアに見守られてきた彼らも、やがて卒業の日を迎える。中学、高校、そして社会に出た時、あまりに違う周囲の環境に戸惑うこともあるだろう。その行く末が案じられるが、この小学校で学んだ経験はきっと本人の糧になる。

 自らも努力し続けてきた彼らの今後にエールを送るとともに、この作品を通して大空小学校の取組みに人々の関心が高まることを期待したい。

『みんなの学校』
2014年/日本/106分/BD・DCP/ドキュメンタリー
©関西テレビ放送
製作:関西テレビ放送
ナレーション:豊田康雄/企画:迫川緑/監督:真鍋俊永
配給:東風
2015年2月21日(土)よりユーロスペースにてロードショー(ほか全国順次公開)
(文=編集部)

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