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【連載第1回 沸騰するアジア医療圏】

日本人はアジア各国の巨大病院や先進医療の現状をほとんど知らない

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韓国の巨大病院のホール

「アジアの医療が進んでいる」、「アジアの医療が熱い」こういった話を聞いてピンと来る人がどの程度いるのであろうか。我々が観光で行くアジアはまだまだ発展途上国である。日本に比べれば劣っているという見方をする人が大半であろう。ましてや医療といった最先端の分野においては日本が優れているのは当然であると思う人が多いのではなかろうか。

 しかし状況は変わってきている。東南アジアの最も進んだ国であるシンガポールにおいては、その人口は500万人と少ないものの1人あたりのGDPが日本を遥かに凌駕している。一党独裁ともいえる厳しい政治体制のもとで、極めて清潔な国としてカジノを含めたリゾートとしての位置づけも含め、年々変化がおきている。

 また反日感情も強い国ではあるが、隣の国の韓国においては、一人当たりGDPについては日本よりも劣るが、ソウル一極集中のもとで、われわれ観光客にあまり縁がない江南地区などで急成長がおきている。もちろん一極集中の歪みは、非常に渋滞がひどいとか、問題点がないわけではない。しかしここもシンガポールと同じように半ば独裁的と言える進め方で経済成長を遂げている。

 いくら経済が成長し続けているといっても、医療分野においてはあまり成長していないのではないかという人も多いと思われる。通常の日本人にとって医療分野といえばいわゆる町医者のイメージであるからであろう。町医者と言うと聞こえが悪いが、かかりつけにおいては、日本であろうとシンガポールであろうとあるいは医療の先進国であるアメリカであるがとヨーロッパであろうと大して違いはない。しかし最先端の医療技術を導入している病院という視点で見ると、国による違いは実は大きいのである。

 このような最先端の医療については通常の我々日本国民は重病になったときしか受診することがない。したがってあまり馴染みがないのである。例えばアジアの国で病院を見る機会などは、現地で病気にでもならない限り、あまりないであろう。

富裕層に対する先進医療の提供が進むアジア

 シンガポールや韓国に次ぐ国であるタイとかマレーシアといった、どちらかと言えば観光を売り物にしている国はどうであろうか。シンガポールや韓国では最先端医療が行われているにしても、さすがにそのような国では高度な医療が提供されているわけでは無いのではないかと思う日本の方も多いであろう。しかし答えはノーである。つまり最先端の医療が行われているのである。もちろんこれらの国ではすべての国民に最先端医療が提供されているわけでは無い一言で言えば金持ちに対しての医療と通常の国に対する医療が異なっているということになる。

 日本においては国民皆保険制度のもとですべての人が同じような医療を同じ値段で受診することができる。この仕組みは世界に冠たる仕組みであり日本の高齢者、言い換えれば病気になる可能性の高い人たちがまさにこのメリットを享受していると言っても良い。

 逆に言えばこのような仕組みがあるために日本においては全ての人が同じような医療を受けることができる当然のことと思われている。しかし、国によってはそうではない。

この連載では、この「熱いアジアの医療状況」をレポートしていきたいと思う。


連載「沸騰するアジア医療圏」バックナンバー

真野俊樹(まの・としき)

多摩大学大学院教授、医療・介護ソリューション研究所所長。医師、医学博士、経済学博士、MBA。名古屋大学医学部卒業。臨床医を経て、95年9月、コーネル大学医学部研究員。外資系製薬企業、国内製薬企業のマネジメントに携わる。同時に英国レスター大学大学院でMBA取得。2005年6月、多摩大学医療リスクマネジメント研究所教授就任。その後、現職。東京医療保健大学大学院客員教授、財団法人医療機器センター客員研究員、JA共済総研客員研究員、JCI アジアパシフィックエリアアドバイザリーボード、篠原学園保育医療情報専門学校校長、NPOMINS理事長、NPOメディカルユニティ理事長、一般社団法人メディカルクオリティアカデミー理事長などを兼任。主な著書『MBA10人の選択』(はる書房)、『糖尿病療養指導基本トレーニング』(日本医学出版)、『健康マーケティング』『医療マーケティング』『医療マネジメント』『介護マーケティング』『新版 医療マーケティング』(以上 日本評論社)、『医療バイオ、医療IT入門』(薬事日報社)、『入門医療経済学』『入門医療政策』(中公新書)、『保険薬局経営読本』(薬事日報社:編著)、『医療経済学で読み解く医療のモンダイ』(医学書院)、『人事・管理職のためのメンタルヘルスマネジメント』(ダイヤモンド社)、『グローバル化する医療』(岩波書店)、『ジョイントコミッションインターナショナル認定入門』『世界標準のトヨタ流病院経営』(以上 薬事日報社、監訳)、『経営学の視点から考える患者さんの満足度UP』(南山堂)、『医療が日本の主力商品になる』(ディスカバー携書)、『比較医療政策』(ミネルバ書房)、『命の値段はいくらなのか?』(角川Oneテーマ新書)など。

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