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なぜプラセボ(偽薬)で効果が出るのか? 臨床試験での不思議なできごと

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あなたの飲んでいるのは実薬?プラセボ?shutterstock.com

 製薬メーカーの新薬開発では、まずラットで実験し、ウサギなどの小動物でさらに実験を行い、いよいよ市場に出そうという際に必ず行われるのが、臨床試験(治験)である。いわばヒトを使った臨床での試験だが、そのときに不思議なことが起こる。

 本当の薬(実薬)と「プラセボ」と呼ばれる偽薬をそれぞれ異なる患者に投与する。プラセボ薬には、薬理効果のない乳糖やデンプン、液体の場合は生理食塩水などが使われる。対象の治験薬と形状、味などはそのままに作られ、一見したところは見分けがつかない。

 当然、実薬にだけ効果が現れるはずである。しかし現実には、プラセボでも効果が発現する患者がいる。この効果を「プラセボ効果」という。試験によっては被験者の30%もの患者に、このプラセボ効果が現れることもある。「偽薬」と日本語訳するといかにも偽物のようで、被験者をだますようだが、それでも効果が出てしまうのは、はたして何が原因なのだろうか?

薬の臨床試験(治験)とはどんなもの?

 ここで少し臨床試験についても触れておこう。ときどき新聞に「あなたはこの病気の治験を受けることができますか?」という治験募集の広告が載っていることがある。「治療のための臨床試験」であるため、略して「治験」と呼ばれる。この治験を行おうとする薬が「新薬」でない場合には、同じような薬効のある対照薬(効果を比較するための薬)を選び、新薬が対照薬と同等かそれ以上の効果をもたらすかどうか試験で証明する。

 しかし、試験を行おうとする薬がまったくの新薬の場合には同じような効果をもつ薬がないので、プラセボの登場となる。プラセボとの比較試験では、このプラセボ効果も考慮して、さらに明確な差を出すことが期待される。

 現在、最も多く行われる試験方法は「二重盲険試験法(ダブルブラインドテスト)」と呼ばれており、より公正で客観的な方法と言われている。この試験では、複数の被験者を、第三者が作る割付表に従ってグループ(群)に分け、治験薬群とプラセボ群でそれぞれ効果を見るものである。被験者はもちろん担当する医師にも、どちらが治験薬で、どちらがプラセボかは伝えられておらず、集計審査をする者だけが知っているというわけだ。

病は気から、治療も気から!?

 しかも驚くことに、このプラセボにも副作用があるというから厄介だ。いくら「実はこれはプラセボだった」と手品のように種明かしをされても、現実には効果と副作用があるものなので、なかなか始末が悪い。昔から「病は気から」と言うが、「治療も気から」ということだろうか? 特に子供や高齢者の治療では、こうした心理的な側面も診なければいけないというから、いわば神様からのいたずらのようなものかもしれない。

 あの東日本大震災の被災直後、避難所に薬がほとんどなく、医療関係者たちを悩ませた。そのため、とある医師は、患者を診察して血圧を測り、実際は上が180ある患者に「150です。大丈夫ですよ」と言って安心させ、高血圧の薬を出さなくて済んだという話もある。

 それだけ医療機関の検査や医師の診察と、処方された薬に疑いをもつ患者は少ないということだろうか。いま日本中の患者がプラセボ効果を発揮すれば、医療費の抑制にも大変役立つのではないかと真剣に考えた。
(文=編集部)

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