MENU

感染妊婦の行き場がない! 医療者の大規模な抗体検査と施設の棲み分けを

感染妊婦の行き場がない! 医療者の大規模な抗体検査と施設の棲み分けをの画像1

この国はこれほどに子供を産むことに冷淡でいいのか


 ある晩、救急車からの連絡が入った。「妊娠1X週の妊婦さん、クリニックにかかりつけ。旦那さんが肺炎で入院しておりCOVID-19のPCR検査待ちです。本人も4日前から微熱、本日本格的に発熱と気道症状の増悪あり、不安になって救急要請されました。現在バイタルサインは保たれており…」

 当センターは産婦人科と小児をみる各科で構成された専門病院であり、大人のCOVID-19肺炎が重症化した場合管理することができない。「既にかなりの施設を当たったのですがどこからも満床や妊娠中とのことで対応困難と断られてしまい…」と救急隊は続ける。この電話を受けた時点では当院では受け入れ体制は整っておらず、搬送を断らざるをえなかった。このような事態は今後、必ず多発する。

現在の周産期医療体制のままでは感染妊婦の受け入れができない

 そもそも現在の日本における周産期医療体制では、COVID-19感染が疑われる妊婦の受け入れが困難を極める。日本では分娩の約半数を一次施設、個人病院や小規模の病院が請け負っているが、そうした施設では1-2人の産婦人科が診療を担当しており、1人倒れれば閉院となってしまうことからとても感染妊婦の診療はできない。それどころか無症候患者のことを考えれば夜間や、風邪症状が出た妊婦の対応を縮小せざるを得ず、その分患者が中規模以上の病院へと流れ込む。

 一方で周産期センターは既に多くの分娩を抱えており、COVID-19以外のハイリスク妊娠も担当しているため、全体のことを考えればCOVID-19妊婦の受け入れには慎重にならざるを得ない。産婦人科はチーム医療が特に必要な診療科だ。多くの分娩管理・手術を一人ではできないし、緊急事態ともなればさらに人手が必要になる。感染妊婦の診療は自身も感染するリスクを負いながらの診療になるが、もしチームの一人が感染すると全員が共倒れ、一定期間隔離・休職せざるを得なくなってしまう。

 そうは言っても誰かが感染妊婦を引き受けねばならない。人手が足りなくなるならば補充をすればよいと考えるかもしれないが、そこに院内感染の問題が拍車をかける。既に多くの施設で院内感染の報告が相次いでいるが、そうした施設との人の行き来は誰が感染しているか、免疫を持っているかわからない状態では事実上不可能であり、人手が足りなくなっても人材の補充ができないのだ。

関連記事
アクセスランキング
専門家一覧
Doctors marche