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【 シリーズ「本能で楽しむ医療ドラマ主義宣言!」 第23回】

日本版『グッドドクター』は韓国版、アメリカ版より輝くことができるのか?

アメリカ版ではお粗末な医療場面

 その一方で、残念ながら医療行為は海外ドラマにしてはお粗末で、突っ込みどころ満載です。

 例えば、ちょくちょく出てくる内視鏡手技。内視鏡を行っている医師は独特の手の動かし方をしますが、劇中ではまったくそのこだわりは無し。おしゃべりしながら、ちょろっと内視鏡を口から入れ、モニター画面は同じ食道を行ったり来たり~ってな感じ。できる医師を描くための医療手技ですので、細かい事は気にしてはいけないのでしょう。

 そんな突っ込みどころ満載の医療シーンを繰り広げている海外医療ドラマはめずらしいな~とも思うのですが、回を重ねるごとにそのプアな描写が気にならなくなるほどのヒューマンドラマとしての充実ぶりに引き込まれます。

 ショーンの変化はもちろんのこと、自分のミスで患者を亡くしたレジデントや患者のために必死に悩む若い医者たちの苦悩も見え隠れしています。人種問題、セクハラ問題も大きく取り上げられていて、アメリカならではの脚本だなあ~とも感じさせる。

 つらつらと書きましたが、とにもかくにもこのドラマ、医療描写より高機能自閉症でありサバン症候群である主人公の、理にかなっているけれど、教科書的ではない医療行為のアイディアの数々が大切なのです。周りのできる医師たちをうならせていく感じはとても爽快感があります。診断に至っていくまでの医師たちのひらめきと、ショーンの特殊能力で上塗りされていく診断力が見ものなのです。

 さてさて日本版グッドドクター。とりあえず見ちゃうんだろうなあ~。
(文=井上留美子)


日本版『グッドドクター』は韓国版、アメリカ版より輝くことができるのか?の画像3

井上留美子(いのうえ・るみこ)
松浦整形外科院長
東京生まれの東京育ち。医科大学卒業・研修後、整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。自他共に認める医療ドラマフリーク。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。
自分の健康法は笑うこと。現在、予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を開いてい。現在は二人の子育てをしながら時間を見つけては医療ドラマウォッチャーに変身し、joynet(ジョイネット)などでも多彩なコラムを執筆する。

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