作用メカニズムも明らかになりつつある
ノビレチンがなぜ排尿障害に有効なのか、詳しいしくみはまだわかっていない。禹教授たちは「膀胱の自律神経を整え、排尿に関わる筋肉を柔らかくし、尿をためる容量を大きくするのだろう」と考えているという。
「排尿障害の治療薬は、副交感神経のムスカリン受容体に結合し、働きを抑制することで効果を発揮するものがあります。受容体にはいくつかタイプがありますが、M2やM3受容体に作用する薬は、口の渇きなどの副作用が現れます」
「仮説ですが、ノビレチンにはそうした副作用が認められないので、M1受容体に作用するのではないかと考えています」
さらに禹教授は、次のように話を続ける。
「もう一つ、前立腺肥大に伴う排尿障害では、PDE(ホスホジエステラーゼ)という酵素を阻害することで効く薬があります。実はバイアグラなどED(勃起不全)の治療薬も、PDEをターゲットにした薬。もしかすると、そちらの効果も期待できるかもしれないと関心を持っているところです」
なお、試験では1日3回、1回ノビレチンを含むシークヮーサー由来PMF100㎎を摂取したが、禹教授によれば1回50mgでも有効性が認められたという。
排尿障害に悩んでいる人は多いが、投薬が必要な重度の患者を除いた軽~中程度の症状の人は、恥ずかしいなどの理由から受診をためらう傾向があるという。日常の生活習慣で改善したいと考えている人は、ノビレチンに注目してみてはどうだろうか。
(取材・文=山本太郎)
禹済泰(ウ・ゼテ)
中部大学応用生物学部教授(琉球大学客員教授も兼任)、株式会社沖縄リサーチセンター代表取締役社長。1992年、東京農工大学・博士(農学)、2009年、東京医科大学(医学博士)、東京工業大学生命理工学部助手、米国ノースウェスタン大学医学部客員助教授を経て現職。