減酒もダイエットでおなじみ「レコーディング」(depositphotos.com)
春3月、早いもので今年も6分の1が終わった。皆さんは、年のはじめに立てたそれぞれの抱負を、今も継続できているだろうか? なかには「今年こそ酒量を減らそう」と、気持ちを新たにした人もいるかもしれない――。
日本人のアルコール消費量そのものは微減傾向にあるが、それでも成人人口の約1割が依存症予備軍といわれている。働き盛りの間でも「このまま飲み続けてはマズイ」と自覚する人は少なくないはずだ。
ところが「酒を減らしたい」という気持ちに偽りがなかったとしても、その意欲が実際に酒量を減らすことにはつながらないかもしれない……。そんな結果が先ごろイギリスでの調査により明らかにされ、その詳細が『Addiction』(1月25日オンライン版)に掲載されている。
減らそうとして逆に酒量が増えた?
この研究を実施したのは、英ブリストル大学のFrank de Vocht氏らのグループ。イングランド地方で16歳以上の男女を対象に実施された調査を元に、「飲酒量が標準をやや上回る」レベルから、「アルコール依存症の疑いがある」レベルまでを含む、高リスク飲酒者2928人のデータを分析した。
まず対象者の飲酒習慣を、WHOの調査研究によって作成された「アルコール使用障害特定テスト(AUDIT)」の質問票を用いて、初回調査時と6カ月後の電話調査時の2回にわたって評価をした。
さらに対象者の減酒への意欲を、「MRAC(Motivation to Reduce Alcohol Consumption)」と呼ばれる尺度によって評価。2回目の調査時には、過去6カ月間に「酒量を減らそうと試みた回数」についても聞いた。
その結果、初回調査時には約5人に1人が「酒量を減らしたい」と回答。また、そうした減酒の意欲のあった飲酒者は、意欲を示さなかった飲酒者と比べて、2回目の調査時までに減酒を試みた人の割合が高かった。
しかし、結果は皮肉なことに……。対象者全体の平均飲酒量が2回目の調査時に減少していたにもかかわらず、初回調査時に減酒の意欲を示した飲酒者では、意欲を示さなかった飲酒者と比べて、2回目の調査時の飲酒量はむしろ多いことがわかった。
家族や友人のサポート、専門家のカウンセリングを含めた具体的な行動計画が必要
研究を主導したde Vocht氏は「酒量を減らそうとしても結局すぐに『いつものパターン』に戻ってしまうというのはよくある話だ。今回の結果はそれに当てはまる」と説明している。
この研究に関与していない米国薬物乱用常習センター(CASA)のLinda Richter氏も、de Vocht氏の見解に同意した上で、次のようにコメントしている。
「飲酒行動のきっかけとなるのは、生理的な要因だけでなく、社会的あるいは環境的な要因など多様だ。これらに対抗するには、意欲や決意だけでなく、家族や友人のサポート、専門家のカウンセリングを含めた具体的な行動計画が必要」
今回の研究では、対象者全体の平均飲酒量が減少していたが、この点についてRichter氏は「ハッキリとはわからないが、研究に参加することで自分の飲酒量を意識するようになったことが影響しているのではないか」と見ている。