これからの「頭痛」の診療法と治療法とは?(depositphotos.com)
久しぶりの大寒波で日本中が大雪の被害に見舞われています。昨年の年末から新年のお正月は強い低気圧の通過しました。また、大学センター試験の時には、西高東低の冬型の気圧配置のために大雪の被害などが出ています。このような、気圧の変化の多い天候で「片頭痛」に悩まされた患者さんも多かったのではないでしょうか。どうぞ体調には十分にご自愛ください。
さて今回は新年にふさわしく「これからの頭痛診療と最新治療」と題してお話ししたいと思います。
①頭痛ダイアリーの電子化とAI(人工知能)の導入の流れ
頭痛診療における頭痛ダイアリーの重要性は、以前にもお話しました(参考:片頭痛を引き起こす原因を知るために、「頭痛ダイアリー」を活用するhttp://healthpress.jp/2015/01/post-1409.html
)。頭痛ダイアリーは自分の頭痛を知ると言う意味でも、頭痛診療をする医師にとっても重要なツールとなっています。
この頭痛ダイアリーですが、その多くは印刷された紙に患者さんが日記のように記入していくものが大半でした。しかし、近年その記入の方法も電子化の流れが始まっています(参考文献:1)。実際、患者さんの中でも、通院されている先生からスマートフォンを使用するタイプの頭痛ダイアリーを始めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この電子化された頭痛ダイアーでは、より長期間の経過を表や図に変換することが可能であり、将来的にはAIによって解析することも可能になっていくのではないかと思います。
②カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とする新規薬剤
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP:Calcitonin gene related peptide)とは、アミノ酸37個からなる塩基性ポリペプチドの総称です。脊髄の後根神経節で産生され、末梢に運ばれるとされています。
末梢血管の拡張作用を有し、侵害受容器(痛みを感知する場所)が興奮すると、脊髄内終末や末梢神経終末から放出され神経性炎症を誘発させると考えられています。実際、片頭痛も、三叉神経末端が刺激されて、そこからCGRPが分泌され、血管拡張を誘発して発症するとされています。
このため片頭痛治療に、CGRPをブロックする薬剤の効果が予想されてきました。近年、このCGRPをブロックする薬剤として、CGRPやCGRP受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体の開発や治験の成績の報告が多数報告されるようになってきました(参考文献:2・3・4)。現在、日本でもこの薬剤の治験が始まっています。今後、近い将来、この薬剤によって日本の頭痛診療も大きく変わることが期待されています。