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近藤誠氏「ワクチン副作用の恐怖」は真に妥当性のある意見なのか?~批評(2)

健康被害に対する救済制度の柔軟な発動を

 近藤氏は「恐怖」の49頁以降、ワクチンには副作用のリスクがあることを事例を挙げながら説明していきます。

 私はもともとワクチンを「安全だ」と主張していませんし、副作用のリスクがあることも否定しません。その点では近藤氏のおっしゃるとおりです。ただ、彼がワクチンと死亡との「因果関係」を安易に断定しているのは問題です。

 ワクチンを打った>健康に問題が生じた
 は
 ワクチンを打った「から」健康に問題が生じた

とは同義ではありません。

 前者は前後関係であり、後者は因果関係です。

 問題は、前後関係と因果関係の違いを峻別するのはとても難しいということです。もちろん、難しいからといって因果関係の可能性を無視する必要はありません。

 一番妥当性が高いのは「比較」、すなわちワクチンを打ったグループと打たなかったグループで比較することです。一例一例の事例で「ワクチンを打った、健康被害が生じた」というエピソードだけでは、ワクチンと健康被害の「因果関係」を証明するのは難しいのです。近藤氏はワクチンの同時接種も批判していますが、これも前後関係と因果関係の峻別をしないで、かなり乱暴な議論をしています。

 ですから、私は常々、因果関係を証明できなくてもある程度の妥当性があれば健康被害に対する救済制度が発動されるようなしくみを作ることを主張しています。

 そうしなければ、ワクチンを打った方々は因果関係があるのかないのかも分からないまま、救済されない不安も抱えなければなりません。科学の専門家でない方が、ただでさえ難しい科学的因果関係を証明するのはとても大変なのです。もちろん、医学の専門家でない弁護士や裁判官にできる仕事でもありません(だから、ワクチン被害の問題を裁判で解決するのは根本的に間違っています)。
(続く)

『近藤誠氏「ワクチン副作用の恐怖」は真に妥当性のある意見なのか?~批評(1)』

『近藤誠氏「ワクチン副作用の恐怖」は真に妥当性のある意見なのか?~批評(3)』


岩田健太郎(いわた・けんたろう)
神戸大学都市安全研究センター感染症リスクコミュニケーション分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授
同大学医学部附属病院感染症内科および国際診療部

医療ガバナンス学会発行「MRIC」2017年12月13日より転載

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