手を洗いすぎるのも考えもの
手を洗うことが感染症対策で有効なことは周知の事実だ。多くの感染症は、手を介して体内に侵入することが多い。石けんをつけて手を洗うことで、手についたウイルスや菌が物理的に除去できるため、手洗いが推奨されるわけだ。
食中毒予防の観点からも、丁寧な手洗い、十分な乾燥、アルコールによる消毒が効果ありとされている(参考:日本食品衛生協会「手洗いマニュアル」)
とはいえ、洗い過ぎは禁物だ。手をはじめとして、人間の皮膚には「常在菌」と呼ばれる菌が存在する。常在菌は、感染症を引き起こす菌(「通過菌」)の増殖を抑えたり、微生物の皮膚への侵入を防ぐ役割をもっている。
手を洗うと通過菌とともに常在菌も除去されるが、完全にいなくなるわけではない。常在菌は表皮だけでなく毛穴にも住んでおり、手洗いによって表皮の菌が少なくなると毛穴から出てきて、皮膚を守るのだ。
しかし、過度に手を洗うと、この常在菌までも少なくなり、皮膚が乾燥して肌が荒れてくる。荒れた皮膚は通過菌を留めてしまい、かえって感染症のリスクが高まってしまう。つまり、意識のしすぎも、逆効果になる。
実行可能な「適度な手洗い」とは?
正しい手洗いの仕方はわかった。洗い過ぎも良くない。かといって、理想の手洗いを毎回しなくてはならないとなると、それがいかに感染予防に効果的とわかっていてもハードルが高い……というのが大抵の人の本音ではないだろうか。
実際のところ、手洗いは、その時々でやり方が変わる。家の中、トイレの洗面所、外出先。石けんやタオルの有無、時間的余裕などの条件がついてまわるから、いつでも正しい洗い方ができるわけではない。それでも感染リスクを下げようとするならば、タイミングを決め、習慣化していくしかない。
「世界手洗いの日」のサイト(http://handwashing.jp/)では、こんなときに手を洗おうと言っている。
○家に帰ったとき
○トイレあと
○動物や昆虫にさわったあと
○ご飯を作る前
○食事をする前
これらのタイミングを外さないよう動線を決める。石けんやタオルを置いて、設備を整える。手触りがいいタオルに変えてみたり、手をかざしただけで泡が出てくるハンドソープ機を使ってみたりして、手洗いが楽しくなるよう工夫する。
できる範囲で<手洗い>のハードルを下げて、とにかく「続けていくこと」が肝要だ。
(文=編集部)