認知行動療法が糖尿病患者のうつ症状を改善!
このような認知行動療法が、糖尿病患者の「うつ症状」を改善したとする研究がある。
糖尿病に特化した自己管理指向の認知行動療法プログラム「DIAMOS(Diabetes Motivation Strengthening)」の開発に携わったノルベルト・ヘルマンズ氏、アンドレアス・シュミット氏らの糖尿病の研究チームは、DIAMOSによって糖尿病患者に最も頻繁に見られ、長期の予後不良を示すうつ症状が改善されたとする論文を『Diabetes Care』オンライン版に発表した。
発表によると、研究チームは214名の参加者(平均年齢30~56歳、女性56.5%、2型糖尿病患者34.1%、HbA1cレベル8.9±1.8%、BMI28.7±71kg / m2)を、糖尿病教育を受ける「DIAMOS群」と「能動的コントロール群(CG)」にランダムに分けて調べた。
12ヵ月間のフォローアップの結果、DIAMOS群のうつ症状(うつ病尺度スコア)が能動的コントロール群(CG)より有意に高かった。だが、DIAMOS群の糖尿病の苦痛と受容、セルフケア行動、治療の満足度、HbA1c値、潜在的な合併症などに対しては、有意な治療効果を示した。さらに、DIAMOS群のうつ病の発症リスクは有意に減少した。
つまり、DIAMOSは、「無症候性うつ病」を伴う糖尿病患者のうつ症状と、糖尿病に関連する苦痛を低減させ、うつ病の発生を予防する効果が高い事実を実証したことになる。
さまざまな生活習慣病のなかでも、特に2型糖尿病は、患者本人のセルフケア行動が鍵になる。しかも、 セルフケア行動を継続的に実行しなければ、実効は望めない。したがって、患者にセルフケア行動の必要性を説明するだけでは十分ではないため、生活習慣を変容するための専門的介入法としての認知行動療法が重要になるのだ。
冒頭の2型糖尿病患者の血糖コントロール値の改善も、DIAMOSによるうつ病の改善も、認知行動療法の大きな成果であるのは明らかだ。食事療法、運動療法、薬物療法とともに、認知行動療法、動機づけ面接(MI)、マインドフルネス(心のエクササイズ)などの心理療法研究の進展に大いに期待しよう。
(文=編集部)