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【インタビュー「がんでも妊娠をあきらめない・卵巣凍結」後編・京野廣一医師】

がんになってもあきらめない妊活・卵巣凍結 費用は卵巣摘出に約60万円、保管は年間10万円

女性ががんになると「妊娠はあきらめるように」と医師から言われるケースも

――卵巣の摘出、凍結は患者にとって、がんをはじめとする疾病の治療と同時に行われることになりますよね。

京野:はい。原疾患の治療が第一であり、卵巣凍結による妊孕性の確保はその次にくるものです。患者さんは、そのときは疾病のことで頭がいっぱいでも、あとで妊娠の可能性を残しておけばよかったと後悔することがないよう、医師としては話をしないといけません。

 ですから患者さんの精神的なサポートは大変重要です。カウンセラーや看護師など親身になって話ができる体制が不可欠です。

――女性ががんになると「妊娠はあきらめるように」と医師から言われるケースもあるようです。

京野:妊孕性についての認識や、また医師の先生の年代もありますね。以前がん専門医の先生にアンケートをとったことがあるのですが、ご年配の先生ですと妊孕性について、ご存知のないケースが多かったです。ただ、卵子、卵巣凍結という方法の認知度は広まりつつあります。

――もし、がんになって、妊娠がしたいのに主治医の先生が「妊娠はあきらめて」と言われた場合はどうすればいいのでしょうか?

京野:HOPEには窓口もありますので、連絡して頂ければと思います。年齢や病気によって、卵子凍結、受精卵凍結、卵巣凍結どちらの適用になるか、お住まいの地域に応じどこに相談すればいいかなど、全国にネットワークをつくっていますので、紹介させていただきます。

 今年4月に開催された第69回日本産科婦人科学会学術講演会では、産婦人科診療ガイドライン(GL2017)に女性悪性腫瘍患者の妊孕性温存に関するクリニカルクエスチョンが新規に採用されたことが紹介された。

 がん治療の世界での少しずつではあるが、女性の妊孕性への理解が進みつつある。しかし、医療者ですらこの問題にやっと関心が向けられてはじめられている状況だ。

 京野医師は次のように結んだ。

京野:卵子提供のルールひとつとってもなかなかルールが決まらない日本で、生殖補助医療の進む道はなかなか険しいものがありますが、医療界や社会的なコンセンサスの早期の構築が人の命や生活を守ると思います。
(取材・文=石徹白 未亜)

●参考
※生殖補助医療を行っている施設(生殖医療登録施設)一覧(http://www.jsog.or.jp/public/shisetu_number/)
※HOPE(日本卵巣組織凍結保存センター)
(http://hope-kyono.com/)

京野廣一(きょうの・こういち)
福島県立医科大学卒、東北大学医学部産科婦人科学教室入局し、1983年、チームの一員として日本初の体外受精による妊娠出産に成功。1995年7月にレディースクリニック京野(大崎市)、2007年3月に京野アートクリニック(仙台市)、2012年10月に京野アートクリニック高輪(東京都港区)を開院。

日本産科婦人科学会 専門医、母体保護法指定医師、日本生殖医学会生殖医療専門医
東邦大学医学部産科婦人科学客員教授、日本IVF学会顧問、日本生殖医療心理カウンセリング学会顧問、日本不妊カウンセリング学会評議員など

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