日本のがんも減少傾向にあるのか?
さて、米国での今回の調査に関し、米オハイオ州立大学総合がんセンターのElectra Paskett氏は「この結果は意外ではない」とコメント。
「われわれは長年にわたって農村地域で調査などを実施してきたが、農村地域が広がるアパラチア地方ではかなりの期間、がんが死亡原因の首位を占めていた。農村地域にはがん死亡率を高めるさまざまな要因がある」と説明している。
一方、今回の研究を実施したグループの一員でCDCがん予防・対策部門のLisa Richardson氏は「私ががん患者を治療するときは、私1人で治療しているわけではない。治療中も、治療が終了した後も、他の医療従事者や患者の家族が患者を支援している。
これは、地域レベルでの予防を目的とした介入にも必要なことだ。関係者の連携が、がんの罹患率を低減し、それに関連する不均衡を解消するための鍵となる」と指摘している。
なお、CDCはがん死亡率の地域間における格差の縮小を目指す上で、農村地域の医療従事者も一定の役割を果たしうると強調。「がんリスクを低減させる習慣、例えば喫煙や副流煙に曝露する機会を減らすこと、日光や日焼けマシンから紫外線を浴びる量を制限すること、運動や健康的な食事を心がけることなどを推進することで地域差を解消できる可能性がある」としている。
また、大腸がんや子宮頸がんの検診、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンやB型肝炎ワクチンなどのがんを予防するワクチンの接種率を向上させることも課題として挙げている。
米国ではがんの死亡を減少させるため、食生活への介入や徹底したがん登録の実施など国を挙げて施策を展開した結果1990年代以降に減少に転じている。
翻って、日本ではがんの死亡率が増加してるといわれる。しかし、そのもっとも大きな原因が急速な高齢化だ。高齢でのがん発生率が非常に高いことを考えると当然の結果だ。
しかし、1990年代後半以降、全がんの75歳未満年齢調整死亡率は全国的に減少傾向にある。2015年の75歳未満年齢調整死亡率は、2005年からの10年間で15.6%減少した。(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)
高齢化とがんの死亡率はある程度必然の結果であるが、仮にがん死亡率の地域差があるとしたら、その要因を探ることでさらに死亡率を下げることは可能のように思える。
(文=編集部)