「アレルギーを引き起こす可能性がある食べ物は与えない」が転換
「アレルギーを引き起こす可能性がある食べ物は子どもに与えない」という考え方が変わってきたのは、「経口免疫寛容」が確認されたためだと推測できる。
経口免疫寛容とは、「口から体内に入った食べ物が私たちの体にとって必要であれば、アレルギーを起こさない」という現象である。たとえば、血液検査では鶏卵で陽性という結果が出たとしても、実際に鶏卵を食べたところで皮膚がかゆくなるなどのアレルギー症状は出ないということだ。
経口免疫寛容という現象から、次のようなことも推測できるだろう――。
ある食べ物が子どもの血液検査で陽性になったので、子どもに一切口にさせずに育てた。そのため、幼い頃から少しずつ食べていればアレルギーを起こさなかった食べ物であるにもかかわらず、経口免疫寛容の機会が与えらなかった。
結果として、子どもが成長したときに、その食べ物をちょっと口にしただけで重いアレルギー症状を起こすようになってしまった。
「摂取時期を遅らせても発症予防につながらない」が世界的コンセンサス
経口免疫寛容の研究は10年ほど前から世界各国で行われるようになった。そして現在は、食物アレルギーの原因になりやすい食べ物を摂取し始める時期を遅らせても、発症予防にはつながらないということで意見が一致しているそうだ。
鶏卵を食べてすぐにじんましんや呼吸困難などのアレルギー症状が起こる子どもや、アトピー性皮膚炎を発症させて赤み・カサカサ・ジュクジュクといった「皮疹」が現れている子どもについては、鶏卵の摂取はアレルギー専門医とよく相談することが必要不可欠だ。
しかし、上記にまったく当てはまらない子どもに対しては、厳しい食事制限は成長や発達に悪影響を与える可能性が高い。子どもの将来にはマイナスに働くかもしれない。
自己流で厳しい食事制限を行っている人にとって「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」は食生活を見直すいいチャンスになるだろう。
●参考文献
https://www.ncchd.go.jp/press/2016/egg.html
http://www.jspaci.jp/modules/membership/index.php?page=article&storyid=205
(取材・文=森真希)
森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。