睡眠の過多と不足と疾患リスクと……
一方、同じく3つ以上の因子を擁するメタボリック症候群患者であっても「6時間以上」の睡眠時間とれている層の場合、上記の2疾患による死亡リスクは同比で「約1.5」と低い数値を示した。
しかも「6時間未満」の患者層では「全(疾患)死亡リスク」も2倍近くあるとの傾向も明らかにされた。
研究班は今回、心疾患のリスク因子として一般にもよく知られてきた「睡眠時無呼吸」も考慮しつつ慎重に解析を行なった点から、睡眠とメタボリック症候群の関連を示唆した成果は「当然、注目に値する」と自負を込めて強調している。
睡眠不足の日本人はせめてメタボ回避を
「裏返せば、メタボリック症候群の患者が睡眠不足問題を解消した場合、早期死亡につながる心筋梗塞や脳卒中のリスクを低減できる可能性があると我々は考えている」(Mendoza氏)
さらに研究結果では、とりわけ高血糖や高血圧のリスク因子を擁する患者が睡眠不足状態に陥ると「早期死亡リスクが増加する」傾向も読み取れた。
「つまり、睡眠不足のメタボリック症候群患者では、自律神経系の問題点や代謝異常を抱えている可能性が否めない」とMendoza氏らは考えており、総評としては「メタボリック症候群のリスク因子を抱える患者たちは睡眠時間に配慮すべきである。具体的には薬物治療や行動療法によって睡眠時無呼吸や睡眠障害、不眠症をコントロールする手立ても有効な手段といえるだろう」と述べている。
もっとも、冷ややかな反応を語る向きもある――。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のByron Lee氏もその一人であり、「彼らの研究からだけでは、睡眠不足が本当に早期死亡の要因なのか、それとも実際は単なる不健康の兆候に過ぎないのか、その線引きは正直むずかしい」との見解だ。
とはいうものの「患者は自分の睡眠時間や質に気を付けるべき」という点では同意を示し、上記のような症状がみられる場合は「医師に相談すべき」と語る。
「メタボリック症候群患者や睡眠不足気味の人々の場合、その行動や生活習慣の観点から察するに、とかく座りやすい傾向とか、食事面での栄養不足なども考えられる」(Mendoza氏)
われわれ日本人が世界比で睡眠不足的傾向が濃い国民であることは、かつて「エコノミック・アニマル」という別称で語られてきた。それが治らない国民性であるならば、せめてメタボのほうだけは大いに気を付けたいものである。
(文=編集部)