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【インタビュー「飲むべきか、飲まざるべきか、それが薬の大問題」第3回・とりうみ小児科院長・鳥海佳代子医師】

無駄で有害な「当たり前」の医療を減らす~ という賢い選択を

薬は必要なときに、必要な分だけ飲むという選択

 すべての国民が、何らかの公的な医療保険に加入するという国民皆保険制度—―。この制度のおかげで患者の負担する金額が少なくなり、気軽に検査を受け、薬を処方してもらえるようになったと考えられる。

 さらに子どもの場合は、自治体が医療費を助成している。薬代が無料になる場合では「タダだったら、もらえる薬はもらっておこう」という意識も生まれるのではないだろうか。

 「医者が薬を出し過ぎたのが先か? 患者が薬を求め過ぎたのが先か? 『卵が先か? ニワトリが先か?』のようにわかりませんが、受診して薬を処方されるのが当たり前という風潮が出来上がってしまったのではないでしょうか」と鳥海医師。

 「もちろん、薬が必要な場合はあります。しかし、薬は作用があれば、必ず副作用もあるのです。薬によってアレルギー反応を起こしたり、肝機能障害を起こしたり、腸内細菌のバランスを崩したりする可能性があります」

 「また、薬剤耐性菌の出現という問題もあるわけです。『とりあえず』『心配だから』と、安易に薬の処方を求めたり、市販の薬を服用したりするのではなく、自分の体としっかり向き合って、自分の健康を自分で守っていこうとする姿勢が大切なのです」と鳥海医師は強く語った。

 薬は必要なときに、必要な分だけ――。これが私たちの賢い選択と言えるだろう。
(取材・文=森真希)

鳥海佳代子(とりうみ・かよこ)
とりうみ小児科院長。島根大学医学部卒業。島根大学医学部附属病院小児科や東京女子医科大学病院母子総合医療センターなどでの研修を経て、2000年に日本小児科学会認定小児科専門医の資格を取得。その後、複数の市中病院の小児科に勤務し、小児科専門医としての経験をさらに深める。10年、同じく小児科専門医の夫とともに、とりうみこどもクリニックを開業。13年、とりうみ小児科を開業。「子育て応援の気持ちで」をモットーに日々、診療にあたっている。著書に『小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない』(マキノ出版)、『小児科医が教える 子どもが病気のときどうすればいいかがわかる本』(中経出版)がある。

森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

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