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【シリーズ「AIと医療イノベーション」第14回 】

NECがAI創薬ビジネスに初参入!「がんペプチドワクチン」を2025年を目標に実用化

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NECがAI創薬ビジネスに初参入(depositphotos.com)

昨年来、AIによる新薬開発をめざして官民学が連携する複数のAI創薬プロジェクトが起動し、市場制覇を虎視眈々と狙っている。

 そのフロントランナーの最右翼と目されるのがNECだ。

 NECは、人工知能(AI)を活用した創薬事業をスタートするために、がん治療用のペプチドワクチンを開発するベンチャー「サイトリミック」を設立したと発表した(2016年12月19日プレスリリース)。同社は、医療業務支援、疾病予防、診断支援など、包括的なヘルスケアサービスを拡充しているが、創薬は初参入。テーマは、がんペプチドワクチンだ。

「がんペプチドワクチン」の効果とは?

 がんペプチドワクチンは、がん細胞に特異的に存在するタンパク質の分子(ペプチド)を人工的に合成したワクチンのことである。がんペプチドワクチンを皮下注射すると、樹状細胞の自然免疫が異常を察知し、リンパ球やキラーT細胞などの免疫細胞が活性化し、がんへの免疫力が高まるため、がん細胞を攻撃・排除する。

 リンパ球やキラーT細胞などの免疫細胞の抗原抗体反応を利用したのががんペプチドワクチン。リンパ球やキラーT細胞などの免疫細胞は、病原体を特異的に認識・排除するだけでなく、その病原体を記憶し、その病原体に再び遭遇してもすぐに認識・排除できる。

 つまり、毒性を弱めたり、死滅させた病原体を接種し、リンパ球やキラーT細胞などにあらかじめ抗原の情報を記憶させ、抗原抗体反応という免疫応答を人為的に作り出し、抗原を排除する。皮下注射の投与後に免疫応答が起こるのを待ち、患者の免疫力でがんを駆逐する。それが、ペプチドワクチンの仕組みだ。

侵襲性も副作用も少ないがデメリットもある

 がんペプチドワクチンの最大のメリット、それは3大療法(薬物療法・外科的治療・放射線療法)よりも侵襲性が低く、副作用が少ない点だ。

 ただし、皮膚の発赤(赤くなる)や硬結(硬くなる)、皮膚潰瘍、アナフィラキシーショックのほか、免疫応答が強く起きれば、間質性肺炎などの肺機能障害を発症するリスクがある。

 また、免疫機能が低下している末期がん患者、重い栄養障害のある患者、ステロイド薬を長期常用する患者などは適さないとされる。治療薬としては未承認のため、明らかな安全性や有効性は確認されていない。外科的治療のような治療の即効性は高くない。

NECは以前からペプチドワクチンの可能性に着目

 がん免疫療法のうち、がん攻撃のブレーキを解除する免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボなど)は、一部のがんに対する優位性が臨床試験で確認され、臨床応用が起動。一方、攻撃のアクセルを踏むがんペプチドワクチンは、エビデンスがまだ確立されていない。

 エビデンスの構築にチャレンジするのが、がんペプチドワクチンを開発するNECのベンチャー「サイトリミック」だ。NECは以前からペプチドワクチンの可能性に着目し、大学との共同研究に取り組んできた。

 2001年、NECは「The WISE(ザ・ワイズ)」というAI(機械学習)技術と生化学的な実験とを組み合わせて、新薬の候補物質を効率的に発見する免疫機能予測技術を開発。2014年以来、山口大学の宇高恵子教授と高知大学の岡正朗学長らと連携し、ペプチドワクチンに関する共同研究を推進。肝臓がん、食道がん、乳がんに発現している2種類のがん抗原を対象に、免疫機能予測技術を駆使し、約5000億通りの候補があるアミノ酸配列の中から免疫力を活性化するペプチドを探索した。

 その結果、日本人の約85%をカバーする複数のHLA(白血球)型に適合し、免疫力を活性化する10種類のペプチドを発見。2015 年4月、ペプチドワクチンの効果を増強する新規の免疫賦活剤(アジュバント)を発見。さらに2016年1月以降、山口大学はNECが発見したペプチドとアジュバントを組み合わせたがん免疫療法の臨床研究に取り組んできた。

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