そもそも難病とは何か? 指定難病306疾病の医療費助成がスタート
奇病のなかの奇病とも言える驚異の難病、ツリーマン(樹木男)症候群の真相を追って来た。最後に難病とは何かを考えたい。
難病は「治りにくい疾患や不治の病」を指すが、医学用語として明確な定義はない。施策上の難病は、厚労省の難病対策要綱によると、原因が不明である、治療方法が未確立である、後遺症を残す恐れがある、経過が慢性的である、介護に著しく人手を要するため、経済的・物理的・精神的な家庭の負担が大きい疾病と定義している。
難病は、特定疾患(特定疾患治療研究事業対象疾患)とも言われる。特定疾患は、厚労省が実施する難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野の対象になる指定疾患だ。
2014(平成26)年5月に、持続可能な社会保障制度の確立を進めるために「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」が成立。治療費は国と都道府県が折半して負担すると定められ、医療費の公費負担を受けられる疾患は、特定疾患から指定難病に移行した。指定難病は、患者数が一定の人数(人口の約0.1%程度)に達していない、かつ客観的な診断基準が成立している疾患を指す。
平成27年7月現在、パーキンソン病、ハンチントン病、ミトコンドリア病、もやもや病、プリオン病、悪性関節リウマチ、シェーグレン症候群、ベーチェット病、アジソン病、クローン病、潰瘍性大腸炎、筋ジストロフィーなど306疾病の医療費助成が始まっている。患者数は約150万人、医療費助成規模は約1820億円に上る(参考:指定難病病名一覧表)。
このような実態を知れば知るほど、難病は、まさに時代をそのまま映す鏡だ。グローバリゼーション、気候風土、環境異変、科学技術の進歩、医療水準、突然変異、ライフスタイル、ストレス、生活習慣の申し子でもある。疣贅状表皮発育異常の真相を知って、改めて気づかされたことがある。
それは、未知と不確実性の脅威があるからこそ、人類はその克服に挑み続けながら、真実を直視し、探求する情熱を決して失わないという気づきだ。
しかも、人間は誰も、予知せぬ病魔や障害に見舞われるリスクを担ったTA(temporary ability:束の間の健康者)にすぎないものの、免疫システムやホメオスタシス(生体の恒常性)に守られた強かな生命体だという気づきでもある。
人間は闇を恐れる。恐怖は無知と逃避から生まれる。だからこそ、人間は、知への飽くなき好奇心と勇気を奮い立たせ、ヘルス・リテラシーを深めつつ、リスク・マネジメントを高める。それを人生の基本スタンスにしたい。本サイトの役割も存在価値も、そこにある。
難病、難題、難関への不屈のチャレンジは続く。人類の敵は、難病やウイルスではない。それは、無知を恐れない人間の怠惰な悪癖なのだ。10歳の少女サハナ・カトゥンさんの1日も早い快癒と健やかな成長を祈りたい。
(文=編集部)