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【シリーズ「病名だけが知っている脳科学の謎と不思議」第20回 】

生後すぐに老化が始まる「コケイン症候群」とは? 指定難病に認定され長くても20歳までしか生きられない!

生後すぐに老化が始まり長くても20歳までしか生きられない

 コケイン症候群の特徴と原因をまとめよう――。

 まず、2歳から4歳頃までに、低身長、低体重、小頭症などの成長の遅延や知能の発達障害が起こり、網膜色素変性や聴力障害など老人性の変化が生じる。やがて、光過敏性の皮膚炎、末梢神経障害のほか、視神経萎縮、白内障、角膜混濁などを伴う。コケイン症候群の際だった特徴は、細胞が紫外線に対して高い感受性を示す光線過敏症ため、紫外線照射により多大な障害を受ける点だ。

 コケイン症候群の原因遺伝子は、ヒト10番染色体上に存在し、Ⅰ型(古典型)、Ⅱ型(先天性)、Ⅲ型(成人発症)、色素性乾皮症(XP/CS)の4タイプがある。発症頻度は、I型10%、II型80%、色素性乾皮症遺伝子異常10%とされる。患児の両親は原因遺伝子を持つので、患児は劣性遺伝によって発病する。患児の兄弟の発病率は、およそ25%と高い。

 患児の平均寿命は、10歳代後半から20歳代前半が多いが、30歳以上の生存例もある。しかし、根治療法はなく、対症療法しかない。

 乳幼児期は紫外線からの防御が中心だが、年長になるに従い、補聴器、眼鏡、足拘縮を予防する装具、頭部を守るヘッドギアの使用のほか、栄養障害、感染、腎障害などに対する対症療法、関節の拘縮や筋緊張に対するリハビリや定期的な理学療法、齲歯対策、定期的な血圧、血糖、肝機能、腎機能の評価なども試みられる。皮膚科、小児科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、リハビリテーション科、内科、歯科など多くの科が専任チームを組んで対応する。

日本人の発症頻度は100万人当たり2.7人

 コケイン症候群は、2015年7月に指定難病に認定されている。日本人の発症頻度は100万人当たり2.7人。Ⅰ型が多く、Ⅱ型、Ⅲ型、XP/CSは稀だ。難病かつ稀少疾患のため、根治への道は険しい。しかし、国立保健医療科学院の希少難治性疾患群の網羅的研究班などの臨床研究も進んでいる。

 また、コケイン症候群研究会は、患者47例(24生存例、23死亡例)の調査結果を発表。さらに、2015年7月には、世界の患者102症例の疫学調査に基づいて、患者ケアの国際的指針が提唱されている。

 さて、発見から80年。克服への道のりはまだ遠いが、小児科医コケインが取り組んだ先駆的な臨床研究は、難病に挑む医師や研究者を勇気づけて来た。1956年、死去。享年76。病因は詳らかでない。もしも彼が生きていたならば、こう語ったかもしれない。

 「昨日まで微かな寝息をたてていた乳飲み児が天に召される。それは、胸を裂かれるよりも悲しいよ。眼窩や頬部の皮下脂肪が減って、顔貌が老人のように見えるだけなんだ。体が不自由でも目が見なくても生き続けてほしい。還暦を迎える強者もいるそうじゃないか! 生命の偉大さに、ただただ感謝だね」
(文=佐藤博)


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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