養子縁組の家庭は子育てに積極的
日本財団は調査のまとめとして、養子縁組家庭の子どもに自己肯定感が育まれやすい理由を次のように考察している。
まず養子縁組家庭は全国調査と比較すると「子どもと夕食を共にする頻度」や「子どもが小さいころに絵本の読み聞かせをしていた割合」「子どもが自然に触れる機会を作っている割合」などが軒並み高い。
また、特別養子縁組家庭の平均年収は約727万円で、全国平均の約571万円と比較して高く、生活面に不安を抱えているケースがほとんどない。それに伴い、塾代などの教育投資も一般世帯よりも高くなっている。
また養子縁組団体の方でも、養親収入水準や子どもへの関与度合いをある程度考慮に入れてマッチングを行っていること。さらに養子を希望する夫婦の多くが、長期間の不妊治療を経て子どもを待ち望んでいること、また子どもが一人だけである場合も多いことから、子どもの養育に積極的な家庭が多いのではないかと推測している。
すべての子どもが温かな家庭で育つ社会に
今回の結果から、養子である子ども達は決して「かわいそうな存在」などではないことがわかる。そして改めて浮き彫りにされるのは、さまざまな事情で生みの親の元で暮らすことができなかった子どもたちに、安定した家庭を提供することの重要性だ。
国連のガイドラインでは、養子縁組や里親制度を通じて家庭で暮らすことが望ましいとされているが、家庭の事情で生みの親と暮らせない子どもたちは、日本にはまだ4万人もいる。
政府はこれまで特別養子縁組を広げていく積極的な政策を取っていなかった。が、ようやく2016年6月に改正児童福祉法が公布され、生みの親が養育できない子どもは、養子縁組や里親・ファミリーホームなど一般家庭と同じ養育環境で、継続的に養育されることが原則となった。
また、これまで養子縁組は児童相談所の業務として明確に位置づけられていなかったが、法律の改正により児童相談所が取り組むことになった。さらに、増え続ける望まない妊娠や貧困の問題を受け、新生児の養子縁組に取り組む自治体も出てきている。
特別養子縁組が「特別」なものではなくなり、子どもが欲しい夫婦が自然に一歩を踏み出せる。そして、すべての子どもが家庭で当たり前に育つことができる。そんな世の中を実現するためにも、制度の整備と人々の理解が深まることを願いたい。
(文=編集部)