女性医師の割合は、米国では3割強、日本では2割弱(shutterstock.com)
「私、失敗しないので」という米倉涼子の決めセリフで人気の『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)や、吉田羊の主演で注目された『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断』(フジテレビ系)など、昨年は女性医師が主人公のテレビドラマが話題になった。
いずれも、スーパーな技術を持つ女医が活躍する痛快なストーリーが視聴者のカタルシスをかき立てて人気を得たようだ。とはいえ多くの人が「これはあくまでフィクション」と思っているだろう。
しかし、アメリカでは昨年末、「女性医師(内科医)に担当してもらった入院患者のほうが、男性医師が診る患者よりも死亡率・再入院率が低い」という研究結果が発表された。「女性医師に診てもらう方が高確率で命拾いできる」という初めての知見は、多くのメディアがこぞって取り上げる騒ぎとなった。
女性医師の患者の方が生存率も予後も良い
この研究を行ったのは、米ハーバード大学公衆衛生学部(ボストン)の津川友介氏らのグループ。2011~2014年に心疾患、肺炎、腎不全などの急性疾患で入院したメディケア(アメリカの公的保険)に加入する65歳以上の高齢者の記録を解析したもので、患者数はおよそ130万人だった。
この間5万8300人を超える一般内科医が1人以上の患者を治療しており、医師の3分の1が女性医師だ。
その結果、女性内科医の治療を受けた患者の30日以内の死亡率は11.1%、男性内科医では11.5%。死亡率だけではない。女性医師の治療を受けた患者は、その後30日以内の再入院率が15%強だったのに対し、男性医師の場合は15.6%だった。
全体として女性医師は男性医師よりも年齢が若く、大病院や大学医療センターに勤務する傾向が高かったほか、診察する患者の平均数が少なかったが、このような差を考慮しても、女性医師の患者のほうが良好な結果がみられることに変わりはなかった。
さらに「女性医師が軽症の患者を担当している可能性も否定できない」と考えた研究チームは、「ホスピタリスト」(病院総合医)に限定したデータも分析した。ホスピタリストは勤務シフトの時間帯に入院してきた患者を必要に応じて担当するため、重症・軽症の差を除外して女性医師と男性医師を比較できる。
その結果、対象をホスピタリストに限定した場合でも、女性医師が担当した患者の30日以内の死亡率は10.8%、男性医師では11.2%、再入院率は女性医師14.6%、男性医師15.1%となり、こちらも統計学的に有意に女性医師のほうが低かったのだ。