葛根湯とアセトアミノフェンをミックスした総合感冒薬は効くのか?
葛根湯は風邪の引き始めに効くかどうかは分からない。では、総合感冒薬のコフト顆粒(日本臓器製薬)はどうだろう?
コフト顆粒は、解熱鎮痛成分のアセトアミノフェンと葛根湯をミックスしているので、アセトアミノフェンが頭痛・鼻水・鼻づまり・くしゃみ・関節の痛みを和らげ、葛根湯が体の免疫力を高める。
葛根湯と総合感冒薬の相互作用が強まるため、熱・喉の痛み、咳、頭痛、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、関節痛などの風邪の諸症状に効能を示すとされる。
コフト顆粒の著しい特徴は、アセトアミノフェンと葛根湯の量にある。
一般的な風邪薬に含まれるアセトアミノフェンは900mgだが、コフト顆粒は半分の450mg。また、コフト顆粒に含まれる葛根湯は2200mgだが、クラシエなどが発売している葛根湯の約半分の量にすぎない。だが、咳や鼻に効く成分量は一般的な風邪薬と変わらない。
つまり、コフト顆粒は、葛根湯と一般的な風邪薬の成分量を減らしてミックスした風邪薬だ。言い換えれば、コフト顆粒には、鼻水や咳を止める効果がない解熱鎮痛薬の葛根湯の欠点を補うために、一般的な風邪薬で使われている鼻水・咳止めの成分を含んでいることになる。
そのような観点から見れば、コフト顆粒は風邪に効く成分をトータルに含んだ風邪薬かもしれない。
葛根湯とアセトアミノフェンの併用リスクは判然としない
しかし、薬理的な矛盾やリスクはないのだろうか?
アセトアミノフェンは熱を下げるが、葛根湯は体温を上げて発汗させて熱を下げたり、体温を上げて免疫力を高める。つまり、葛根湯の体温上昇の作用をアセトアミノフェンの解熱作用が打ち消す。葛根湯とアセトアミノフェンを併用する薬理的なリスクはないのだろうか?
科学論文検索サイト「Cinii」の「アセトアミノフェンと葛根湯の相互作用について」によると、併用するとアセトアミノフェンの血中濃度が高まるかもしれないとしている(動物実験)。また、人を対象にした別の試験では、葛根湯とアセトアミノフェンを併用しても安全性の問題は発生しないとしている。
葛根湯で熱を下げたいが、鼻水や咳も和らげたい
このような実証試験は少ないので、葛根湯とアセトアミノフェンの併用リスクは判然としない。
コフト顆粒は、葛根湯+風邪薬成分のハイブリッドだ。葛根湯で熱を下げたいが、鼻水や咳も和らげたい。そんな人には適するかもしれない。
葛根湯+風邪薬成分のハイブリッドは、コフト顆粒の他に、救心製薬の「救心のかぜ薬赤箱」、第一三共ヘルスケアの「プレコールエース顆粒」などがある。
これらの総合感冒薬を服用する場合は、用法・用量を厳守しなければならないのは言うまでもない。小児なら保護者の指導監督の元で服用させ、2歳未満の乳幼児なら医師の診療を受けなけばならない。
特に葛根湯は、体力の充実している「実証」向けの方剤なので、体の虚弱な虚証・裏証(虚弱、病中・病後の衰弱期)の人や発汗の多い人には適さない。また、胃の不快感、食欲不振、吐き気、動悸、不眠、発汗過多なの副作用を伴う場合も少なくない。
したがって、胃腸病、高血圧、心臓病、脳卒中、腎臓病、排尿障害、甲状腺機能亢進症などの既往症のある人、服用中の薬がある人、妊娠中の人などは、医師に伝えたうえで、適切な診断と処方を受けてほしい。
(文=編集部)