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秋の夜長、日本人の約半数が体験する「金縛り」が出現!その正体・予防策・対処法は?

入眠時幻覚が同時に起きる、それが金縛りの正体!

 なぜ金縛りが起きるのだろう? 睡眠にはレム睡眠(脳は醒め、体は眠っている)とノンレム睡眠(脳は眠り、体は醒めている)がある。金縛りは、夢を見ている眠りの浅いレム睡眠の時に急に目覚めると起きる。

 レム睡眠の時は、脳は活発に活動しているので、目は眼球運動を行い、夢を見ている。一方、体は活動を休止して骨格筋は弛緩しているので、脱力状態になって動けない。体がほとんど動けない睡眠麻痺と、「白い幽霊」が見える入眠時幻覚が同時に起きる、それが金縛りの正体だ。

 つまり、深い眠りのノンレム睡眠から入らず、浅い眠りのレム睡眠,から入ると、入眠のリズムとバランスが乱れるため、金縛りになりやすい。

そもそも、なぜ夢を見るのか?

 では、そもそも夢を見るのはなぜだろう? 神経生理学によれば、睡眠中は大脳皮質や辺縁系の活動水準が覚醒時に近い状態にあることから、外的・内的な刺激や興奮を受けると、認知・記憶・思考・判断を司る大脳から過去の記憶映像が再生され、記憶映像に合致した夢のストーリーが形成されると説明する。

 つまり、副交感神経や運動神経の末端から神経伝達物質のアセチルコリンが放出されると、骨格筋、心筋、内臓筋が収縮し、同時に視覚、聴覚、体性感覚(皮膚・筋肉・腱・関節・内臓)の感覚入力を大脳新皮質へ中継する視床が刺激されるので、レム睡眠が起きる。

 その結果、大脳皮質や辺縁系は、記憶を整理したり、嫌な出来事の記憶を緩和したり、現実不可能な体験を代償したり、緊急時のシミュレーションによって体験の免疫を作ったりしている。これが夢のメカニズムだ。

金縛りは脳の潜在的な生体抑制システム

 しかし、金縛りで見る夢(幻視)はまったく違う。見ているのは、金縛りになる直前の室内の風景、睡眠直前や睡眠直後の残像が多い。

 金縛りになった時、脳は何をしているのだろう?

 レム睡眠中は、脳幹から脊髄へ向かって脊髄の運動ニューロンを抑制する指令が送られるため、体は脱力状態に陥る。この時、深く関わっているのが、脳幹に含まれ、中脳と延髄をつなぐ橋(きょう)という部位だ。三叉神経、外転神経、顔面神経、聴神経など多くの脳神経が交差している橋は、大脳の視覚野に直結しているため、脊髄の運動ニューロンが抑制されると、体を動かす信号がブロックされるので、脱力状態になる。

 このように夢(幻視)と体が連動しないように巧みに働く脳の潜在的な生体抑制システム、それが金縛りだ。生体のリスクが高まらないように脳がブレーキをかけるホメオスタシス(恒常性)維持の機序とも言える。

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