JTの悲しき<ポジショントーク>の理由
今回、完全に論破されたJTは、巷で<ポジショントーク>と揶揄られる始末。だが、同社にはそうせざる理由がある。
JTは昨年、健康へのリスク説明が不十分だったとして、カナダの現地子会社「JTIマクドナルド」に対して起こされた訴訟の第一審で、ケベック州上位裁判所(日本の高裁に相当)から約2000億円の損害賠償の支払いを命じられた。
JT側は判決を不服として控訴しているが、実はJT、この手の訴訟をほかにも抱えている。JTは現在、高額賠償が生じるリスクを抱えているのだ。そんな中、国立がん研究センターの<肺がんリスクが確実>という声明に、「はいそうですか」と言えるわけがないのだ。
厚生労働省は今年5月、15年ぶりに「たばこ白書」を改訂して公表。日本の受動喫煙対策は世界でも「最低レベル」とし、屋内の全面禁煙などの対策が必要だとまとめた。すでに、公共の場所のすべてで屋内全面禁煙としている国は49カ国ある(2014年時点)。
今回の国立がん研究センターとJTの論争は、「屋内の100%禁煙化を目指す」厚労省と「JT株の筆頭株主」財務省の代理戦争となるのだろうか。その行方を見守りたい。
(文=編集部)