コシヒカリ、あきたこまち、ひとめぼれの品種の違いも識別
農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)によれば、SSRマーカーを活用したコメのDNA品種鑑定に取り組んでいる。SSRマーカーとは何だろう?
コメのDNAを構成している4つ塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)配列の反復数の違いを高精度に検出するのが、SSR(Simple Sequence Repeat/マイクロサテライト)マーカーだ。SSRマーカーは、実用性、再現性、信頼性が極めて高いので、ヒトのDNA鑑定にも利用されている。
もう少し科学的に言えばこうなる――。まず、コメのDNA塩基配列が反復する領域を24種類のSSRマーカーによって増幅する。その増幅した塩基配列をジェネティック・アナライザーと呼ぶシーケンサーを使って精確に読み取り、コメの品種を特定するのだ。
SSRマーカーは、判定誤差が極めて低いため、信頼性が高く、コメの品種間の違いが高精度かつ効率的に識別できるので、ササニシキ、あきたこまち、ひとめぼれなどのブランド米の差別化を精確に図れるメリットがある。
現在、およそ48品種の品種鑑定が行われているが、今後、データベース化が進めば、およそ300品種以上の品種鑑定も実現できるという。
コメのDNA品種鑑定法としては、マルチプレックスPCR法、RAPD(任意増幅多型性DNA)法、イネの葉から品種を特定するSNPs定性分析法(日本穀物検定協会)などもあり、それぞれ普及している。さらに、コシヒカリ判別用キット(人種苗管理センタート)、農林水産省モニタリング検査対応キット (ビジョンバイオ)、コシヒカリLAMP判別キット(ニッポンジーン)、コメ判別用PCRキット(タカラバイオ)など、多種多様なDNA品種鑑別キットも市場に出ている。
各社はコメのブランディングの獲得に凌ぎを削っているが、美味しいコメの生産につながるのなら、競争がやや加熱するのもやむを得ないだろう。
このような技術革新が進めば進むほど、美味いコメが食べられる。近い将来、安全性やリスクが確認され、社会的なコンセンサスが定着すれば、ゲノム編集によって想像を超えた着想のニューブランド米がデビューするのも決して夢ではない。さあ、今日も温かいごはんで「いただきま〜す!」。
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。