無責任な飼い主のせいで「今日、死んでもらいます」
「ドリームボックス」に二酸化炭素が注入され、上を向き喘ぎ始める犬たち(画像提供:塩村あやか事務所)
目を見開いたまま倒れた犬、痙攣する犬……。確実に致死させるため15分ほどガスの濃度を保つ(画像提供:塩村あやか事務所)
確実に死んでいるかを確認。口から血を流している犬は、口の中を噛み切るほど苦しかったのだろう(画像提供:塩村あやか事務所)
床が開き落下した犬たち。最期は「モノ」のように処理される(画像提供:塩村あやか事務所)
ペットの「殺処分ゼロ」は、今や多くの人の願いだ。しかし、状況改善が遅々としているのはなぜだろう? その原因のひとつは、元凶である日本のペットの流通システムにメスが入らないことだろう。特に、陳列ケースに幼い子犬を一同に並べて売る「展示販売」の存在は大きい。
日本では子犬を入手するとき、ペットショップで子犬を探す方法が一般的だ。犬の購入先の約7割がペットショップという環境省による調査結果もある(平成20年)。近年はブリーダー購入も増えてはいるが、やはり欧米諸国ほどブリーダーから直接買うという意識が浸透してはいない。
ブリーダーから購入すれば、余分なマージンも流通過程もなく、最も安全で安心だ。また、近年は「買う」のではなく、「譲渡」の選択肢もかなり周知されているが、まだまだ少数派だ。
一方、幸いなことに、インターネット上の写真を見ただけで、オンラインショップ購入する習慣も浸透はしていない。そもそもネットショップは、「対面説明の義務付け」という動物愛護管理法での規制があるのだが、この手の商売はなくならない。
これは良心的なブリーダーではなく、悪質な繁殖業者が母体となっていることが多い。このように日本ではあいかわらずペットショップ購入が主流であり、一部の良心的な店はあるもののガラスケースでの陳列販売が一般的だ。
展示販売を<動物虐待>とみなす国も
しかし、海外ではペットショップでの展示販売は、歓迎されないものになりつつある。展示販売は子犬の心身に負担をかけるため、世界的に歓迎されないものになっているからだ。なかには、展示販売を動物虐待とみなす国もある。
イギリスは、しっかりと法規制されているし、動物愛護の意識が浸透しているドイツでは、直接的な法規制はないものの店頭販売はほぼない。ひと昔前までは、展示販売が珍しくなかったイタリアも自粛の傾向だし、アメリカも法律で規制される州が次々と現れている。
犬はおよそ半年で、大人に成長する。かわいい見た目の子犬らしさを売り物にできる期間は極めて短い。そのため日本では、親離れにはまだ早すぎる時期から流通経路に乗せて、成長が進む前に店頭に出そうとする傾向がある。
子犬としては、幼すぎる段階で親兄弟から離され、安心できない環境でストレスにさらされる。心身の成長発達への悪影響も否めない。
これをイギリスなどでは動物虐待とみなしている。人間でも幼少体験は人格形成に大きな影響を及ぼすのだから、犬も子犬期の大きなストレスや不安感は、将来の気質に何らかの影を落とすことになるだろう。
ただし、動物愛護国のイギリスやドイツの隣国、フランスは、自由を重んじるお国柄か法規制がなく、店頭での生体販売がまかり通っている。アメリカも、日本のそれより劣悪で大規模なパピーミルがあちこちに存在するという。
<欧米は動物愛護が進んでいる>とひとくくりには言い切れないが、私たちが手本とすべき姿があるのは事実だろう。