カッピングが世界的に再び息を吹き返した背景は?
日本でカッピングの普及にひと役買ったのはプロレスラーだろう。いまは国会議員として活躍しているアントニオ猪木氏は、現役時代にカッピングをしていた。猪木氏をはじめとする著名レスラーが、その背中や太ももにカッピングの痕跡である丸い皮膚変色を隠すことなくパフォーマンスし、それがテレビ中継で全国に伝わった。
先述のように、古くからある民間療法なので効果を否定することはできないし、有害か無害かという議論にも大した意味はない。それよりも、そんなにメジャーではなかったカッピングが再び息を吹き返して世界的に普及している流れについて考えてみたい。
一つには、情報化があるだろう。映像とインターネットの普及で、カッピングの痕跡が多くの人の目に触れて関心が高まった。もう一つは、痕跡が残ることで、治療を受けた人達は達成感を得たのではないか。針灸やマッサージでは、その効果は本人にしかわからないから、第三者に説明することが難しい。カッピングは「治療を受けた」という体験の実感が残る。それを見た人にも、説明がしやすい。こうして情報の連鎖が働いて、普及が促進していくのではないか。
このようにしてカッピング療法の再評価は、ビジュアル情報の時代にうまく乗ることができたのだろう。
民間療法である以上、その効果には個人差がある。効果がないばかりか、体調が悪化することもあるかもしれない。ただし、「見た目にはかなり劇的な変化を残すものの、比較的無害だと言える」という知見も示されている。
さて、このカッピング療法ブームの行方は? エビデンスはなくとも好成績という「実績」が残れば、4年後の2020年の東京五輪でも、アスリートの身体にカッピングの痕跡を見つけることできるだろう。
(文=編集部)