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HIV感染者でも「ゴムなしセックス」OK!? 驚きの研究結果が引き起こす波紋

コンドームを使っても危険はゼロにならない

 HIVに感染すると、血液、精液(カウパー腺液を含む)、膣液、母乳に、ウイルスが多く分泌される。一方、唾液、汗、涙、尿などにはほぼ含まれず、これらを介して他の人に感染させることはない。

 感染経路は、粘膜(腸管、膣、口腔内など)や血管に達するような皮膚の傷からとなり、傷のない皮膚からは感染しない。膣性交よりアナルセックスのほうが感染しやすいとされるのは、行為によって腸管内の粘膜に傷がつきやすいからだ。

 今回の結果は、感染者が薬を継続して服用していることが前提だ。抗HIV薬を飲むことにより、体内のウイルス数を検出限界未満まで減らすことができるため、結果的にパートナーに感染させるリスクはかなり低くなるのだ。

 一般的にHIVの感染確率は、コンドームを使用せずに挿入する性行為(膣性交やアナルセックス)を行った場合、0.1〜1%と考えられている。しかし、コンドームを使用しなかった、たった1回のセックスでも感染した人もいるため、この数字はあくまでも目安だ。

コンドームへの過信よりも「学びあえる関係性」

 もしコンドームを「正しく」使えば、わずかな感染確率を果てしなくゼロにすることが可能だろう。

 ちなみに、コンドームを着けての妊娠率(=失敗率)は3〜14%と意外に高い。しかも、相互伝染性やウイルスの性質(精子の500分の1の大きさ)などから、HIVウイルスの感染を防ぐのは妊娠を防ぐよりも難しいといわれている。

 またHIVウイルスの場合、オーラルセックスでも口内の傷を介して感染する危険性を認識しておなければならない。さらに、梅毒、淋病、クラミジアなど、他の感染症にかかっていると粘膜に炎症を起こしやすくなり、感染の確率が数倍から数十倍にも跳ね上がることもある。

 つまり、たとえコンドームを使っていたとしても、使い方を間違えていたり、不良品だったり、それ以外のリスク要因が揃えば、感染リスクはゼロにはならない。コンドームを過信することも、やはり危ないのだ。

 結局は、パートナーと安全なセックスについて話し合い、危険な行為について学びあえる関係であること、そして不特定多数の相手と関係を持たないようにすること――。

 性感染症の危険を本当の意味で遠ざけるのは、この2点に尽きるのだろう。HIV感染者だけでなく、非感染者にとっても、それは同じだ。
(文=編集部)

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