透析はあくまで移植までの暫定的な治療
欧米の透析事情は日本とだいぶ違う。泌尿器科指導医の光畑直喜医師(明神舘脳神経外科クリニック)によると、「欧米では糖尿病から腎不全となり、血液透析導入となるケースが多く、日本に比して血液透析患者の3年生存率も60%前後と低い。しかも、広大な範囲に医療機関が点在しており、日本のように町を歩けば透析病院や透析クリニックにあたるほどアクセスが良好でない」という。
このため身近にデバイスを置くことで利便性も向上し、より患者自らが、積極的に腎不全の治療に参加し、学習度も向上しやすいし自己管理も能力もしっかりしてくるためこうしたデバイスの導入が待望されるという事情があるようだ。
「24時間かけてゆっくり老廃物を体外へろ過して行くので血圧の変動、バイタルの変動とも身体にやさしい点は評価できる。食事制限も強くないため、食事制限についていけない患者には利点となる。
ただし血液回路が必要であるため、ある程度このデバイスを使いこなすには、かなりの知識、学習、練度を必要とし、かつデバイスのアクシデントに対処するバックアップも必要なためコストも上昇するし、患者の経済的、肉体的負担も強いられる」(同医師)
しかも、欧米での血液透析は、CAPD(腹膜透析)と同様に移植希望者に待機リストにある間のみの治療と考えられており、仕事などをしながら職場、自宅で血液透析が出来ればQOLの向上につながる。また移植適応外の高齢者においても利便性は上昇する。
ひるがえって日本ではどうか。移植待機の期間があまりにも長すぎるため、腎臓移植を受けられないまま血液透析を続け、最後のときを迎える患者も少なくないのが現状だ。
光畑医師は、「透析はあくまで腎不全を治す手段ではないので、移植腎を越えるQOLの向上、生存期間の延長をもたらす事は出来ない」と前置きしながらも、「少なくとも技術面の改良、安全性の確保、充分なバックアップ対策、低コストが実現できれば通常の血液透析が持つ暗いイメージを少しでも払しょく出来ることは確実だと思う」 とする。
(文=編集部)