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熊本地震「エコノミークラス症候群」で死者~“ふくらはぎ”が生死の明暗を分ける

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ふくらはぎを揉むだけで予防できる(shutterstock.com)

 4月14日に発生した「熊本地震」による余震が続く中、18日に熊本市西区内の車中で避難生活を続けていた51歳の女性が脳動脈血栓塞栓症で亡くなった。

 いわゆる「エコノミークラス症候群」による初の死者だ。NHKによると、熊本県下の医療機関には18日時点で少なくとも18人がエコノミークラス症候群の疑いで搬送されたという。

 熊本県によると、県内約670カ所の避難所で過ごす人は約11万7000人(19日午前9時現在)。車中で寝泊まりを続ける避難者はかなりの数になると予想され、今後もエコノミー症候群による重症患者の増加が懸念されている。

 エコノミー症候群(脳動脈血栓塞栓症)とは、静脈にできた血の塊(血栓)が血流に乗って肺に達し、肺の入口である肺動脈に詰まってしまう病気だ。今回の一連の報道でも「立ち上がろうとして突然に」という発症状況の類似表現が多く見られるとおり、いきなり呼吸困難や胸痛に襲われて最悪の場合は死に至る。

 通称の端緒は、1977年、同症が航空機のエコノミークラス搭乗者に多いことに着目した学者が命名した。日本では、2002年、ドイツで活躍中だった元サッカー日本代表の高原直泰選手が発症(実際は格上のビジネスクラスを利用中)したことで市民権を得た。

 さらに2004年、新潟中越地震時の車中避難生活者から死亡者が相次ぐにおよんで、その通称が広く伝播した。

ふくらはぎを揉むだけで明暗が分かれるが……

 被災して自宅が使えない、余震で屋根のある場所(屋内)が怖い、幼児やペット同伴なので施設内は気が引ける、プライバシーが制限されるのが耐えられない……。足を伸ばせないほどの狭さや体の痛みなどのリスクがありながらも、車中泊を選ぶ人々の事情はさまざまだ。

 18日には日本循環器学会や日本血管外科学会など7つの学会が声明を発表し、エコノミークラス症候群への注意喚起を呼びかけている。車中泊を選ぶ人たちへのアドバイスは「こまめに足を動かすこと」「むくみを感じたらマッサージをすること」「1〜2時間おきに体を動かすこと」「水分の補給を忘れずに」と、一様にシンプルな予防策である。

 ところが、長時間座り続けて同じ姿勢を維持する職業のひとつであるタクシー運転手によると、この簡易な予防策を意識して行なうとなると億劫で難儀だという。

 だが、職業柄、ふくらはぎに生じたむくみや痛みを解消するため、停車中などに「ふくらはぎを揉む」。これが結果的にエコノミークラス症候群の予防につながっていると、あるタクシー運転手はそう証言する。

 確かに、心臓の次に大事なポンプとして機能している「ふくらはぎ」を回復させることは、血液の循環を助けることになる。

 そして、その運転手は、続けて実際に身近で起きた、同僚のリアルな悲劇談をこう打ち明けた。

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