魚介類を煮るためにも使われた縄文土器
3月30日付けの福井毎日新聞によれば、福井県若狭町の鳥浜貝塚で出土した縄文土器片を調べた英国ヨーク大学の研究チームは、少なくとも9000年もの長期間にわたって、縄文土器は魚介類を煮るために使われていたと『米国科学アカデミー紀要』に発表した。
発表によると、研究チームは縄文土器片から16点のサンプルを作り、ガスクロマトグラフ質量分析計を使って、残された脂質が動物由来か魚介類由来かを詳しく調べた。その結果、1万4000年前から5000年前に使われていた土器片のサンプルの77%から魚介類の脂を検出した。貝塚からはシカやイノシシを食べた骨も見つかった。
およそ1万1000年前、氷河期から温暖期に入ると、森が拡がり、シカやイノシシも増えたため、食料が豊富になり、縄文土器の生産量が増えた。深鉢形が多い縄文土器は、煮炊きや食料の保存に使われたと考えられていた。調べた土器片からは動物の脂も検出されたが、魚介類の脂の成分が圧倒的に多かった。
共同研究者で若狭歴史博物館(小浜市)の鰺本真友美調査員は、「魚を煮たものが美味しかったのか、祝宴に必要だったのかは不明だが、北海道でも約1万4000年前の土器で魚を煮ていた。全国で同じような傾向があれば、土器拡大の背景を知る手掛かりになる」と話している。
21世紀を迎えるや否や、9.11事件、イラク戦争を皮切りに、中東紛争、IS(イスラム国)のテロ事件などが頻発し、難民移民、人種差別、経済格差が頭を悩ませる。
しかし、今回の研究データは、縄文人は争いを好まず、縄文時代は平和が保たれ、社会は平穏だった事実に気づかせてくれる。非戦・平和を願った縄文人のDNAは、戦争をしない・させない・煽らない平和憲法(第9条)にも受け継がれているにちがいない。
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。