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不正請求の女医・脇坂英理子容疑者はこの先も医師として生きていける!?

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脇坂英理子オフィシャルブログ「おしえて〜Ricoにゃん先生」より

 診療報酬不正請求の疑いで9日に逮捕された医師の脇坂英理子容疑者(37)。

 翌日のワイド番組は軒並み「タレント女医」の転落双六を報じていたが、明けて3月11日は東日本大震災から5年目の日。彼女の豪遊映像を再び流すTV局はさすがに見当たらなかった。しかし、脇坂容疑者の医師としての将来はどうなるのか?

 「年収5000万円だけど貯金ゼロ」とか「(ホストクラブで)一晩で最高900万円使った」と豪語する派手な装飾面を剥がせば、かの女医が犯した罪は至ってシンプル。斯界では「昔からよくある古典的な手口」と鼻にもかけない類いの「詐欺」である。

 しかし、日本の国民皆保険制度を支える健康保険の基金は、保険加入者全員による法定上の掛け金であり、公金として管理されるべき共同財産、事実上の「税金」だ。よくある手口で仕掛け自体は単純だが、その罪は非常に重い。

保険医の登録を取り消されてもへっちゃらな医師たち

 今回のような不正請求をした場合、厚生労働大臣は健康保険での診療ができる保険医の登録を取り消すことができる。

 経済措置としては原則5年分を遡って返還が求められ、保険医の再指定も5年間は拒まれる。裏返せば「5年経てば」再指定が可能となる。中には5年未満の実例もある。

 じつは保険医取り消し処分を受けた医師が生き延びる道は幾通りもある。代表格がいわゆる「自由診療」だ。保険適用となっていないエビデンスレベルの低いあらゆる診療の世界で、高額な治療費を請求し、むしろ荒稼ぎができたりするわけだ。

 もともと美容成形の世界はそのようなクリニックがほとんどであり、そのほかにも「がんが治る」という謳い文句で効きもしない免疫療法やビタミン大量投与治療などで患者から多額の治療費を絞り上げているクリニック、大都市圏での需要が急増中のED/AGA対応のクリニック、占い師まがいの診療所などなど挙げればきりがない。

 保険診療ができなくても医師免許さえあれば食い扶持には困らない仕組みになっているのだ。

 大半の先進国の事情に反し、そもそも日本の医師免許には更新制度がない。2005年に一度議論されかかったが、多くの議員から反対意見が出され閣議決定の原案から削除された経緯もある。

 2013年秋の医師調査『更新制度の必要性』(m3.com編集部)でも「必要」の回答は21.6%に止まった。つまり命を預かる職業としての自らを律することに関しては、これほど消極的な人たちなのだ。

 導入しても「医療の質的向上と安全の確保にはつながらないのでは?」と疑問視する声。現行の学会や研修で十分と考える向き、免許更新の審査方法が難儀と見る慎重派、時間を惜しむ現場系、思いつくあらゆる言い訳がずらりと並ぶ。

 もちろん医師免許停止という事実上の「永久剥奪」がないわけではない。厚生労働省の審議会のひとつである医道審議会は、医師、歯科医師、理学療法士・作業療法士などの免許取消・停止などの行政処分を行なうことができる。

 医師免許取り消しの処分が実施されれば、医療行為ができなくなるため、自由診療さえも不可能となる。この場合であれば元医師の医療者としての社会復帰はきわめて難しい。

医師の犯罪に対してアマアマの日本

 処分統計資料から2014年度の例を検証すると「免許取消」は4件で、内訳は「強制わいせつ・児童福祉法違反1件、準強制わいせつ2件、心身の障害1件」という事案だ。医師が起こした事件や犯罪の数に比べてその処分件数が意外に少ないと感じられる。

 ちなみに「医業停止1月」の項に「窃盗1件」、「歯科医業停止3月」の項に「診療報酬不正請求5件」等の処分例も散見されるが、世間値から鑑みて医師/歯科医師に対する罪と罰の量刑目安がかなりユルい傾向が如実に読み取れる。

 医道審議会が公表している“量刑の目安”を見ていくと、「診療報酬の不正請求により保険医の取消を受けた場合」の原則欄には「不正の額の多寡に関わらず、一定の処分とする」とある。

 これは、脇坂に限らず実態として相当数の不正請求があるため、量刑を確定させたくないのだとも読み取れる。

 刑事事件を引き起こし、実刑判決を受けた場合でも、刑期満了後10年、執行猶予であれば終了後5年を経れば、医師免許の再申請自体は可能だ。しかし、さすがに医師免許の再交付は1996年以降一切行われていないようだ。

 警視庁組織犯罪対策4課によれば、脇坂容疑者と指南役らによる不正請求の総額は約6900万円に上るという。はたして彼女の刑が消滅を迎えた際、「タレント女医」の「タレント」が剥奪されても「女医」としての復帰はありうるのだろうか!? 

 いくら“医師不足の国”だとはいえ、まさかね。
(文=編集部)

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