ちょうど良い硬さの快便をめざそう!
このような慢性便秘症の改善策はあるのか?
慢性便秘症は、便が大腸をスムーズに移動していないため、腸内の停滞時間が長くなるほど便が硬くなる。便の硬さは、ブリストルスケールと呼ばれる世界基準で7段階に分けられる。慢性便秘症は、コロコロ便やゴツゴツした硬い便が多い。
尾高院長は、普通便を中心にやや硬い便からやや軟らかい便までの、ちょうど良い硬さの便をめざすために、「食事と生活を改善する10ポイント」を勧めている。
①朝食を抜かずにしっかりと3食を食べる。
②食物繊維が多く脂肪分が少ない食事を心がける。
③適度な水分を摂る。
④腸内細菌のバランスを改善する。
⑤ミネラルやビタミンをたっぷりと摂る。
⑥規則正しい生活リズムを守る。
⑦睡眠時間は十分に取る。
⑧便意が起きれば我慢せずにトイレへ行く。
⑨適度な運動と休息を習慣化する。
⑩リフレッシュする時間を作る。
いずれも基本の基本だが、案外忘れやすく、怠りやすいポイントばかりだ。
とはいえ、慢性便秘症は、なかなか治りにくい。便秘薬の併用も必要になる。最も広く使われているのは、便の水分を増やして軟らかくする酸化マグネシウム製剤だ。2012年には、小腸粘膜からの水分分泌を高めて便を軟らかくするクロライドチャネルアクチベーターのルビプロストン(アミティーザ)が登場した。腸の蠕動運動を活発にするイトプリド(ガナトン)、モサプリド(ガスモチン)、トリメブチン(セレキノン)などの消化管運動改善薬や、大腸の粘膜や腸壁内の神経を刺激するセンノシド(プルゼニド)、ピコスルファート(ラキソベロン)などの刺激性下剤もある。
これらの薬は効果が高いが、多用すると便が下痢状になる、排便時に痛みを伴う、長期間常用すると服用量が増える、下剤が全く効かない難治性便秘になるなどのリスクがあるので、要注意だ。頻繁に飲むOTCの便秘薬を買うときは、刺激性下剤を避け、便を軟らかくする薬を薬局の薬剤師に選んでもらうことが賢明だ。その他、最近、注目されている漢方薬に大建中湯(だいけんちゅうとう)がある。生薬ならではのさまざまな働きによって腸の働きが改善され、腸内ガスを減らす効果も期待できる。
尾高院長は「毎日朝1回、ちょうどよい硬さの便をすぐに出しきった感じがあるのは快便だ。しかし、お通じは人それぞれなので、たとえ排便が3日に1回でも快便と考えていい」と話す。
指扇病院排便機能センターの味村俊樹センター長は「便秘は症候群であるため、単一の治療法では対処できないが、病態ごとに対応すれば、治療は難しくない。食物繊維を適量摂取し、大腸に適切な刺激を与えることが重要だ」と指摘する。
最近、お通じの回数が減った、排便が苦しい、出し切れない、お腹が張る、肌あれ、肩こり、腰痛が辛いなどの症状が改善しない時は、消化器内科などを必ず受診してほしい。
(文=編集部)
●参考文献
毎日新聞医療プレミア:笑顔をつくるおなかの医学
日経メディカル:便秘診療の進め方とポイント